太陽光発電 ポジティブな転換点を過ぎたか

世界経済フォーラム(WEF)が過去20年にわたって発表してきた「グローバルリスク報告書」(Global Risks Report)。このレポートでは、今後2年間(短期)と今後10年間(長期)の重要なリスクをランキング形式で示しており、世界が直面する課題を理解する上で重要な資料となっています。2024年版が1月に出されました。

WEF:グローバルリスク報告書2024年版

これによると、短期的リスクとして「誤報と偽情報」が最大のリスクとなっています。AIを使った精妙な偽情報も出回るようになり、事態はますますややこしくなっていますから、納得です。

一方、長期的リスクをみると、
1位 「異常気象」
2位 「地球システムの危機的変化(気候の転換点)」
3位 「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」
4位 「天然資源の不足」
10位 「汚染」
とされており、上位10位のうち5つは自然環境に関連しています。

注目したのは、2位のところ。「気候の転換点」とあります。去年は世界的に観測史上最も暑い1年となり、世界中の誰でも肌で気候危機を感じていますね。

だからこそ、気候変動を止めるためのポジティブな社会的転換が必要ですよね。社会的な転換について、ひとつ明るい研究結果も出ています。昨年10月に公表された論文 “The momentum of the solar energy transition” (太陽エネルギーへの移行の勢い)です。

nature communications: The momentum of the solar energy transition

太陽光発電の経済的魅力が投資増加のサイクルの中で急速に向上していて、「世界はすでに太陽光発電の転換点を過ぎた可能性がある」とされています。

ただ、現在、4つの側面で不確実性が生じています。
・再生可能エネルギー主体の電力システムにおける送電網の安定性
・発展途上国における十分な資金の利用可能性
・サプライチェーンの能力
・雇用を失う地域からの政治的抵抗

もちろん、今後こうした課題を克服することができれば、太陽光発電への転換を加速させることができると期待されてます。

2025年度からは東京と川崎市が新築住宅への太陽光パネル設置を義務付けます。相模原市も、2027年度から義務化する方向で検討に入っています。再生エネルギーの普及をはじめ、多くのポジティブな社会的な転換点は、私たちのひとりひとりの努力によって実現することができます。持続可能な社会の実現に向けて、行動していきましょう。

以前ニュースレター(1月17日号)でご案内した、神奈川県・地球環境戦略研究機関(IGES)共催のウェビナーの動画と資料が公開されたのでお知らせします。

開催された日:1月24日(水)
「2050年脱炭素社会の実現に向けて私たちができること~個人の行動を社会変革につなげるには」