舞台はカリブ海。昨年12月、ベネズエラの野党指導者マチャド氏がキュラソー島を経由して国外へ脱出し、ノルウェーでノーベル平和賞を受賞したことは大きなニュースになりましたよね。そのキュラソーのすぐ隣に、「ボネール」という島があります。アラワク族系の先住民カケティオ族の言葉で「低い土地」を意味していて、それが名前の由来だという説が有力です。
「ビーチダイビングの聖地」と呼ばれるほど人気のダイビングスポット。50種類以上の造礁サンゴ、350種類以上のサンゴ礁魚類が生息していて、島を文字通りぐるりと取り囲む海域27平方キロメートルがボネール国立海洋公園に指定されています。サンゴ礁を守るために、港に停泊する船であっても錨を下ろすことは禁止、という徹底ぶりです。2011年からユネスコ世界自然遺産の暫定リストに登録されているそうですが、「え、こんなにしっかり守っているのにまだ”暫定”なの?」と思ってしまいますが、正式に登録されるためにクリアすべき壁がまだいろいろあるんでしょうね…。
そんな楽園のような島が最近、気候変動に関するニュースで注目されました。
先月28日、オランダのハーグ地方裁判所が画期的な判決を下しました。内容は、「オランダ政府は、ボネール島の住民を気候変動の脅威から守るための対策を十分に取っておらず、これが人権侵害にあたる」というものです。
Dutch Government Violated Human Rights By Failing to Protect Bonaire Residents From Climate Change, Court Rules
(オランダ政府はボネール島住民を気候変動から守ることができず人権を侵害したと裁判所が判決 2026年1月29日 EARTH.ORG)
ボネール島はベネズエラの沖合に浮かぶ小さな島ですが、2010年にオランダの「特別自治体」となっていて、住民26,000人の約8割がオランダ国籍を持っています。(その前はオランダ領アンティルという’自治領’に属していたそうで。歴史ってややこしいですね)
海面の上昇や気温の変化、洪水や豪雨といった気候変動の影響をダイレクトに受ける環境にありながら、これまではオランダ本国に比べて対策が遅れていました。島の南部には経済的にも重要な塩湖が広がっていますが、楽観的なシナリオでも2150年までに全て水没するという報告も出ています。
まさにボネール(低い土地)であるが故に、気候変動の影響も大きいわけです。そして海水温の上昇によって貴重なサンゴ礁を失いかねません。サンゴ礁は天然の防波堤として高潮から島を守る役割も果たしているので、それを失うとリスクがさらに高まります。そんな中、2年前に環境保護団体グリーンピースの支援を受けて8人の住民が訴訟を起こしていました。
裁判所は、政府の不十分な対策が欧州人権条約に違反すると認めました。これは裁判所が「政府が気候適応戦略の策定を怠ることは、自国民への差別である」と認めた世界初の判例となったそうです。
オランダ政府には今後18か月以内に、さらなる適応策の導入と、気温上昇を1.5度以内に抑えるための具体的な温室効果ガス削減目標を設定することが命じられました。
そういえば、昨年7月に国際司法裁判所が「各国には排出削減と影響を受けた国や人々への補償を行う法的義務がある」と認めたことも大きな動きとして報じられて記憶に新しいですよね。気候変動の影響で困っている地域は数多くありますから、このような事例はこれからも出てきそうですね。
ボネール島先住民が話していたカケティオ語は現在では消滅してしまっていて、17世紀の文献にわずかな単語が残されているのみです。それを思うとなおさら、カケティオ語の名前がついたこの島が安心して暮らせる場所であって欲しいですね。
参考情報:
The impacts of climate change on Bonaire (2022-2023)
(ボネールにおける気候変動の影響 2022年9月28日 アムステルダム自由大学)
さて、一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブの主催で生物多様性保全の取り組みに関するシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: シンポジウム「企業が語るいきものがたり Part 18」
日時: 2026年2月20日(金)13:30~17:00
会場: 三井住友海上駿河台ビル(千代田区)/オンライン
主催: 一般社団法人 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
本シンポジウムは、企業の生物多様性保全の取組を共有する場としてこれまで17回にわたり開催されてきました。第18回となる今回は、「ネイチャーポジティブ経済への第一歩」をテーマに、国際的に加速する「ネイチャーポジティブ」への移行に向けて、企業が踏み出す第一歩について、実践事例や最新動向を交えながら議論を深めます。
生物多様性に関心をお持ちの企業・NPO・業界団体・一般の皆さまにも、広く
ご参加いただける催しです。ぜひご参加いただけますと幸いです。
・主催者挨拶(JBIB共同代表)
・特別講演(環境省)
・基調講演(JBIB事務局)
・テーマ別セッション1
「TNFDの実践で見えてきたこと」
・テーマ別セッション2
「都市で自然を再生する」
・総括
詳しくはこちらをご覧ください。
