アマゾンとチベット 2万km離れても作用するティッピングポイント   

リニア中央新幹線が開通した暁には、東京~大阪間(約500km)を約1時間で結ぶそうです。遠い場所が「近く」なる、すごい話です。しかし、ティッピングポイントという観点からすると、なんと2万km離れた場所であってもたいして遠くないようです。

気候変動の転換点(クライメイト・ティッピングポイント)の一つは、アマゾン熱帯雨林枯死であり、現在も急速に悪化しています。学術雑誌サイエンスでは最近の論文2本を掲載しています。

要点をまとめると、以下の通りです。

(1)アマゾンの熱帯雨林は、残存する森林の3分の1以上が人為的な影響を受けて劣化していることが分かって、森林の劣化を促進する4つの主要な妨害要因は、森林火災、エッジ効果(森林破壊地域に隣接する森林で起こる変化)、選択的伐採(違法伐採など)、極端な干ばつです。
(2)効果的な森林保護政策は、市場主導の土地転換プロジェクトに対する国際的な資金調達を排除することです。その最大の資金源は、ワシントンDCに本部を置く米州開発銀行(IDB)と、中国政府の一帯一路構想(BRI)の2つです。
(3)アマゾンの生物多様性と生態系サービスを維持するためには、地域および地球規模での法律、経済、エネルギーシステムを根本的に変革することが必要です。

論文リンク:
The drivers and impacts of Amazon forest degradation

Human impacts outpace natural processes in the Amazon

紹介記事(Future Earth):
Human Activity Has Degraded More Than a Third of the Remaining Amazon Rainforest, Scientists Find

また、アマゾンの熱帯雨林の環境悪化は、距離が2万㎞以上離れたチベット高原に直接影響を及ぼすことが分かっています。アマゾンの気温が上昇すると、上空の大気の流れを通じて、チベット高原の気温も上昇します。ただし、アマゾンで降水量が増えると、チベット高原では逆に降雪量が減少します。このため、チベット高原の積雪は融解し、2008年以降はティッピングポイントに近づいています。2030年頃までに1.5℃気温上昇目標が達成されない場合、複数の気候転換点が超えられて、他の気候転換点に連鎖的に影響を与えることが懸念されています。

論文リンク:
Teleconnections among tipping elements in the Earth system

紹介記事(Future Earth):
Linking the Amazon and Tibetan Plateau: A Network Analysis of Climate Tipping Elements

地球も、大気環境というレベルで考えると意外と小さいものなのかもしれませんね。

1月25日にCENニュースレターで紹介したAIMES、Future Earth、Earth Commission、WCRPが主催する一連の気候転換点に関するウェビナーについて、次回のウェビナーをご案内します。

名称: Governing Earth System Tipping Points in Times of Multiple Crises 
    (複数の危機の時代における地球システムの転換点の管理)

日時: 2023年2月27日(月)14:00~15:30CET(日本時間 22:00~23:30)
会場: オンライン
主催: AIMES、Future Earth、Earth Commission、WCRP
参加費: 無料
主な内容:
・Dirk Messner (UBA/German Environment Agency)
 :Multiple Crises in Global Sustainability Governance
  (グローバル サステナビリティ ガバナンスにおける複数の危機)
・Manjana Milkoreit (University of Oslo)
 :Governance of Earth System Tipping Points(地球システム転換点のガバナンス)
・質疑応答/ディスカッション
司会:Solveig Crompton (University of Stavanger)

詳しくはこちらをご覧ください。

*イベント終了後にも、気候転換点に関するウェビナーサイトより録画や資料の閲覧が可能です。