保護区ではない しかし貢献している場所

キリンの向こうに高層ビルが立ち並んでいる写真。みなさんもどこかで見たことがあるかもしれません。ケニアの首都ナイロビにあるナイロビ国立公園は都心から10kmほど。普通乗用車のタクシーで行っても簡単に野生動物が見られ、サイやライオン、キリンの向こうにビル群が見えるという、不思議なところです。「世界でただ一つの野生動物の首都」とも呼ばれる所以です。

Kenya Wildlife Service: Nairobi National Park

ここには季節ごとに移動するヌーもやってきます。この公園と、その南にある広大な平原を含めた地域を生息域としていて、雨季にはこの広い平原地帯に散開して生活しますが、乾季になると、水や食料を得やすいナイロビ国立公園に集まってきます。

1960年代には、こうした生活を送っていたヌーは30,000頭いましたが、2010年代前半には5,000頭に、そして2020年を過ぎる頃にはたったの200頭、つまり150分の1になってしまいました。

公園の外の平原は保護地域になっていなかったため、地域開発が進むにつれて生息地が分断・減少していったことが原因です。

「OECMs」(または単に「OECM」)という考え方があります。文字通りの意味は、生物多様性の保全手段の一つとして「その他の効果的な地域をベースとする手段(Other Effective area-based Conservation Measures )」ということですが、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域のこともこのように呼びます。

2018年の「生物多様性条約の第14回締約国会議」で合意された定義はちょっと分かりにくくて、「保護地域以外の地理的に画定された地域で、付随する生態系の機能とサービス、適切な場合、文化的・精神的・社会経済的・その他地域関連の価値とともに、生物多様性の域内保全にとって肯定的な長期の成果を継続的に達成する方法で統治・管理されているもの」だそうです。

もはや自分が正しく理解できているか不安になるような文ですが、どうやら「保護区ではないけれども人間の営みが結果として生態系の保全に貢献している地域。人と自然の共生地域」と考えて良いようです。

改めてナイロビ国立公園のことを振り返ると、公園の南に広がる平原地帯がOECMsとは正反対だったんだなぁと思えて、惜しいような寂しいような気がします。

さて、その「OECM」や、日本型OECMとされる「自然共生サイト」に関する講演が行われるので、ご案内します。

名称: ソーシャルイノベーション研究会
    「自然共生サイト/OECM」と生物多様性

日時: 2024年5月16日(木)15:00~16:30 
会場: オンライン 
主催: 同志社大学人文科学研究所 第11研究
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

環境省が推進する自然共生サイト/OECMの基本的な考え方と、実際の認定申請にあたっての手続き上のポイント、そして<都市のなかの何でもない自然である>「陽楽の森」が自然共生サイトとして認定されることにどのような意義があるか、をお話いただきます。

講師:
家中 茂 氏 鳥取大学 地域学部特任教授

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