60,000羽のペンギンが住む繁殖地の方から「アンモニアの濃度が基準値の1,000倍」の風が吹いてきたら、一体どんな感じなんでしょうか…。鼻が曲がるほど強烈なのか…。しかし、どうもそれが気候変動を緩和する効果があるかもしれない、という話を見かけました。
“Penguin guano is an important source of climate-relevant aerosol particles in Antarctica”
(ペンギンのフンは南極の気候に影響を与えるエアロゾル粒子の重要な発生源)
(nature, 2025年5月22日)
ヘルシンキ大学の研究者マシュー・ボイヤー(Matthew Boyer)氏らが南極のマランビオ基地付近で大気中のアンモニア濃度を計測したところ、8kmほど離れたペンギンの繁殖地の方角から風が吹いているとき、その濃度が基準値の1,000倍になることが分かりました。…いや、ちょっと待って下さい。8kmも離れているのに1,000倍ですよ。60,000羽のフンが積もっているその現場に行ったら、どうなっちゃうんでしょうかね。
ところで、雲が形成されるには大気中の大きな粒子に水蒸気が凝結する必要がありますが、南極の澄んだ空気には埃や花粉などの粒子がほとんどありません。その代わり、周辺海域の植物プランクトンから自然に排出された硫酸分子のクラスターが雲の材料になります。ここに高濃度のアンモニアが加わると、そのクラスター形成が1,000倍加速されるそうです。この研究で繁殖地にいるペンギンのフンがアンモニアの供給源になっていて、雲の形成に関与していることが分かりました。
雲は太陽光を反射するため、冷却効果があります。雲が増えると冷却効果も高まる、というわけです。
フンが雲の形成につながり、気温上昇を抑制する役割を持っているなんて、考えたことがありませんでした。面白いですね。しかし逆に考えると、生息数が減少しているペンギンがこのまま減り続けると、南極の雲が減少し、気温上昇が進みやすくなるという懸念も出てきます。気候変動が野生動物に影響を与える話はよく聞きますが、これは野生動物が気候変動に影響を与えている話ですね。生物多様性の保護が直接的に気候変動の緩和にもつながる、というふうにも捉えられる興味深い話ですね。
さて、八千代エンジニアリング株式会社と株式会社パルコデジタルマーケティングの主催で生物多様性とサプライチェーンに関するセミナーが開催されるのでご案内します。
名称: 「企業の生物多様性とサプライチェーン連携の進め方」
日時: 2025年6月5日(木)11:00~12:30
会場: 渋谷ヒカリエ(渋谷区)/オンライン
共催: 八千代エンジニアリング株式会社、株式会社パルコデジタルマーケティング
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
【講演】「企業の生物多様性とサプライチェーン連携の進め方」
・堅田 恭輔(八千代エンジニヤリング株式会社 事業開発本部 サステナビリティサービス部コンサルタント)
・鈴木 雅詞(株式会社パルコデジタルマーケティング 事業開発部 マネジャー)
内容:生物多様性について、サプライチェーンと生物多様性、生物多様性実現への貢献、サプライチェーンと生物多様性の事例、課題と解決策
【トークセッション】
登壇者:
・堅田 恭輔(八千代エンジニヤリング株式会社 事業開発本部 サステナビリティサービス部コンサルタント)
・鈴木 雅詞(株式会社パルコデジタルマーケティング 事業開発部 マネジャー)
内容:出席者の方に事前にいただいた質問への回答と関心の高いテーマについてトークセッション
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