ブラジルのベレンで開催されたCOP30は11月22日に閉会しました。報道を見ると「会議の決裂の懸念があった」とか、「脱化石燃料への行程表がまとまらなかった」とか、「途上国の適応のためのインフラ整備資金の拠出計画も不十分」とか、「成果は乏しかった」など、なかなか厳しい会議だったことが伺えます。毎回そうですが、各国の利害を調整することの大変さを改めて感じます。
閉会にあたり、グレナダの政治家で国連気候変動枠組条約事務局長を務めているシモン・スティール氏がスピーチを行いました。その中から言葉をいくつか拾ってみます。
「今回のCOPが政治的な荒波の中で開催されるのは分かっていました。今年は、否認・分裂・地政学が国際的な協力に大きな打撃を与えました。しかし、皆さん、COP30は、気候変動対策協力が健在であり、人類が住みやすい地球を目指して戦い続け、気温上昇を1.5℃に抑えるという確固たる決意を固めていることを示しました。気候変動対策に勝利したと言っているわけではありません。しかし、私たちは紛れもなく今も戦い続けていますし、反撃しています」
「しかし、このCOPが私たちをどれほど前進させたかを無視してはいけません。ナビゲーションの補助があろうとなかろうと、私たちの進むべき方向は明確です。化石燃料から再生可能エネルギーとレジリエンスへの移行は止められません」
「先住民の言葉で”集団的努力”を意味する”ムチロン(mutirao)”が、今まさに実践されているのを目撃しました。COP30で勝利を収めたこのムチロンの精神を、私たちは受け継いで行かねばなりません」
頭の片方では足りないところに注目して今後に向けた危機意識を持つことも大事ですが、もう片方ではスティール氏の言葉に倣って、進んだところや後退していない部分に注目して、前向きに考えたいものですね。
ムチロンというのは地域の人々が互いに助け合って作業を行う伝統的な仕組みのことで、キャッサバの植え付けや収穫、家の修理、地域の奉仕活動など、いろんな場面で行われているそうです。”みんなのために、みんなでやろう!”ということですね。世界でムチロン・スピリットがより高まっていくことに期待したいですね。
さて、地球環境戦略研究機関(IGES)と地球産業文化研究所の主催でCOP30についてのシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: COP30報告シンポジウム
日時: 2025年12月12日(金)13:30~16:20
会場: オンライン
主催: 公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES),
一般財団法人 地球産業文化研究所(GISPRI)
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
○ 開会挨拶
武内 和彦 公益財団法人地球環境戦略研究機関 理事長
○ COP30報告 *発表者は変更の可能性がございます
・松井 宏樹 外務省 国際協力局 気候変動課長
・平塚 二朗 環境省 地球環境局 気候変動国際交渉室長
・木村 範尋 経済産業省 GXグループ 地球環境問題交渉官
・坂下 誠 農林水産省 大臣官房 地球環境対策室長
○ 質疑応答(事前質問に対する回答形式)
モデレーター:
前川 伸也 一般財団法人地球産業文化研究所 地球環境対策部 部長
パネリスト:
・松井 宏樹 外務省 国際協力局 気候変動課長
・平塚 二朗 環境省 地球環境局 気候変動国際交渉室長
・木村 範尋 経済産業省 GXグループ 地球環境問題交渉官
・坂下 誠 農林水産省 大臣官房 地球環境対策室長
○ 閉会挨拶
蔵元 進 一般財団法人地球産業文化研究所 専務理事
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