空気で蓄電 700分の1の体積変化を使いこなす 

“蓄電”といえばまずリチウムイオン電池が思い浮かびますが、再生可能エネルギーが大量に導入されつつある今、太陽光や風力発電による出力の変動を受け止め、”日単位”の長期蓄電ができる技術が切望されています。そこで注目されているのが、空気を使った全く新しい蓄電の仕組み、空気を使って蓄電する「液化空気エネルギー貯蔵」(LAES、Liquid Air Energy Storage System)です。 

初めて聞いた時は「え、空気で蓄電ってどういうこと?」と思いましたが、仕組みはこうです。余っている電力を使って空気を圧縮し、極低温まで冷やして液体にします。空気を液化すると体積が約700分の1になります。このことが大量のエネルギーを効率良く貯蔵できる鍵になります。蓄えておいた液体空気を使うとき、高圧で加熱して一気に気化させ、このとき膨張する力をタービンに伝えて発電します。空気は元々どこにでもある“資源”なので、燃料を輸入する必要もなければ、燃やす必要もなく、ゼロエミッションで完結する点が大きな特徴です。

LAESの利点は、「蓄電時間の長さ」。リチウムイオン電池が「数時間~半日」レベルなのに対し、LAESは日単位以上の長い貯蔵が可能で、しかも発電所レベルの大規模運用にも耐えうるスケール感を持っています。 さらに、装置自体の寿命も30年程度と長く、経年劣化が比較的少ないとされています。

日本国内でも具体的な動きが進んでいます。広島ガスと住友重機械工業が共同で建設したLAES商用実証プラント(廿日市エネルギー貯蔵発電所)が今月1日に運転を開始しました。この設備では、液化空気の製造過程で液化天然ガス(LNG)冷熱エネルギーを利用して充電効率を高める世界初の試みが行われています。 容量は5MW×4時間程度ですが、これは“実運用に耐える大きさ”として注目されています。

LAES商用実証プラントの運転開始について(住友重機械工業、2025年12月10日)
https://www.shi.co.jp/info/2025/6kgpsq000000o62f.html

課題としては、空気を液化する過程での熱損失や、極低温管理のための設備コストといった技術面・経済面でのハードルも無視できないようですが、”空気で蓄電”なんて、なかなか夢がありますよね。さらに研究が進んで、いつの日か実用化されることを期待しています。

さて、東京大学などの主催で持続可能性シナリオに関するシンポジウムが開催されるのでご案内します。

名称: 環境経済・政策学会創立30周年記念シンポジウム「持続可能性シナリオ研究の未来を考える」
日時: 2025年12月25日(木)13:30~16:30 
会場: 東京大学/オンライン 
主催: シナリオに関するシンポジウム企画実行委員会
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

○ 開会・趣旨説明
杉山正和 (東京大学先端科学技術研究センター 所長・教授、JSTシナリオPJ研究代表)

○ セッション1 | シナリオ研究の最前線 (70分)
【モデレーター】
高橋 潔 (国立環境研究所社会システム領域 領域長)
【登壇者】
西浦 理 (国立環境研究所社会システム領域 研究員)
「シナリオモデル相互比較プロジェクトの活動と本プロジェクトで定量化された緩和シナリオの紹介」

夏 樹娟 (東京大学大気海洋研究所 助教)
「持続可能な食の未来―AgMIPの知見と魚食の役割」

大橋 春香 (森林総合研究所野生動物研究領域 主任研究員)
「気候変動対策と生物多様性保全の交錯点:シナリオ研究が描く課題と展望」

○ セッション2 | シナリオと環境政策の接合:脱炭素を例に (80分)
【モデレーター】
江守 正多 (東京大学未来ビジョン研究センター 教授)
【登壇者】
後藤 靖博 (経済産業省資源エネルギー庁長官官房総務課戦略企画室長)
「第7次エネルギー基本計画及び2040年度エネルギー需給見通しについて」

増井 利彦 (大阪大学大学院工学研究科 教授/国立環境研究所社会システム領域 上級主席研究員)
「日本の脱炭素シナリオ分析」

藤森 真一郎 (京都大学大学院工学研究科 教授)
「長期気候緩和目標下でのCDRの役割とグローバル研究の事例紹介」

杉山 昌広 (東京大学未来ビジョン研究センター 教授)
「政策分析とシナリオ分析の接合に向けて」

○ 総括・クロージング
亀山 康子 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授、環境経済・政策学会 副会長)
筒井 純一 (電力中央研究所 首席研究員)

【総合司会】
マヌエラ・ ハルトヴィッヒ (東京大学未来ビジョン研究センター 特任研究員)

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