”破産”は英語でbankruptで、16世紀ごろから使われるようになったようですが、その由来はイタリア語のbanca rottaという言葉にあります。bancaには”ベンチ”と”(ベンチで商売をする)貸金業者”の二つの意味があります。ん?なんでベンチと貸金業者が結びつくのかな?と思うのですが、勝手に想像すると、大昔はベンチに座りながらでもできてしまう商売が他にあまりなくてちょっと特異な存在だったせいかもしれませんね。商売が立ち行かなくなった業者はベンチを壊すという習慣があったとも言われています。banca(ベンチ/貸金業者)がrotta(壊されて/中断して)しまう状態ということで、banca rottaなんですね。現代のイタリア語でもbancaは銀行を意味し、イタリアの中央銀行の名前は”イタリア銀行(Banca d’Italia)”です。
さて、聞きなれない言葉をまたひとつ知ることになりました。「水破産」(Water Bankruptcy)です。1月20日に国連大学が新たな報告書を発表し、世界が「地球規模の水破産の時代に突入した」と警告しました。
World Enters “Era of Global Water Bankruptcy” UN Scientists Formally Define New Post-Crisis Reality for Billions(世界は「世界水破産時代」に突入 国連科学者、数十億人にとっての”危機”後の新たな現実を正式に定義)(国連大学、2026年1月20日)
従来の「水ストレス」や「水危機」という言葉は、一時的な危機や回復可能な状態を想定していましたが、現在の状況はそれを超えていて、もう”危機”という言葉では足りない、”危機”の後(post-crisis)の状況にあるようです。多くの地域で、自然の水循環や貯水能力が不可逆的に損なわれ、以前の状態に戻れない状況にあると定義されています。これは、年間の再生可能な水量だけでなく、帯水層、氷河、湿地などに蓄えられた長期の「水の貯蓄」も使い果たしていることに由来します。
私たちの生活は水なしには成り立ちませんから、水破産の影響は深刻です。少しだけ数値を拾ってみました。
・75%:「水不安」あるいは「危機的水不安国」に分類される国々の人口割合
・2億人:地盤沈下地域に住む人々
・40億人:少なくとも年間1か月以上、深刻な水不足を経験する人々
・170百万ha:高い水ストレス下にある灌漑農地の面積(フランス+スペイン+ドイツ+イタリア規模)
・30億人:全総水貯留量が減少または不安定な地域に住む人々(かつ、世界の食糧供給の半分以上がそうした地域で生産)
・1.8億人:2022-2023年に干ばつ状況下にあった人々
・2.2億人:安全に管理された飲料水を利用できない人々
・3.5億人:安全に管理された衛生設備を利用できない人々
「40億人が深刻な水不足を経験している」とは…。
借金を返済できない者に対する古代ローマの法律の中にこんなものがあったそうです。「債権者は債務者の身体のいくつかの部分を切り取ることが出来る。そして、正当な取り分より多く、または少なく切った者は、罪を問われない」と。(Roman law of Bankruptcy, Roland Obenchain,1928)
実行されていたかどうかは分かりませんが、恐ろしいですね。そんな時代に生まれなかったのは幸運でした。ただ、大事なのは、そのくらい厳しい目で見られていたということなんですね。この「水破産」の問題も、実際に生命に関わることですから、「き、切り刻まれないようにしないと…」みたいな切迫感を持ってこの問題をしっかり把握して対策を講ずる必要がありますよね。
報告書には「地球規模の政策アジェンダにおいて水を重視することで、国際協力を刷新し、環境投資の効率性を高め、気候変動、生物多様性の喪失、砂漠化に対処するための3つのリオ条約の停滞した進展を再び加速させることができます」とも書かれています。確かに、この「水」に関する新たな認識が、気候変動対策の停滞を打破するひとつのきっかけになるといいなと思います。
さて、ひろしま環境ビジネス推進協議会の主催で環境とエネルギー分野に関するイベントが開催されるのでご案内します。
名称: 国内外の環境・エネルギー分野最前線と広島発の挑戦
日時: 2026年2月5日(木)14:30~17:00
会場: fabbit広島(広島市)/オンライン
主催: ひろしま環境ビジネス推進協議会
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
【第1部】
「世界・日本の環境・エネルギー政策トレンドと企業へのインパクト」
一般社団法人 Green innovation 代表理事 菅原 聡 氏
・世界的な脱炭素潮流と日本のGX政策の行方
・政策・技術・企業動向から見る「2050年に生き残る企業」像
・中堅・中小企業の脱炭素先行事例
【第2部】
「県内企業の挑戦とこれからの共創」
広島アルミニウム工業株式会社 取締役 常務執行役員 田島 佑紀 氏
・Green innovationとの連携背景と社内変革のリアル
・サプライチェーンの中で果たす中堅企業の役割
・地域・行政・企業が連携する「ひろしま発GXモデル」構想
【第3部】
「ボッシュのグローバル視点でのイノベーション活動」や
「社内で取り組んだ新規事業に関して」
BOSCH Japan 山本 翔 氏
・BOSCHが取り組む「循環型生産」と「デジタル化」の融合
・「日本市場における期待と共創の可能性」
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