気候非常事態ネットワーク、東京大学名誉教授 山本良一
米国環境保護庁は、二酸化炭素やその他の温室効果ガスが公衆衛生と福祉を危険にさらすと断定した、危険性認定として知られる2009年の政府宣言を2月12日に撤回した。ドナルド・トランプ大統領はこの撤回を、「アメリカ史上最大の規制緩和措置」と呼んでいる。一方、2月11日には米国オレゴン州立大学のウィリアム・リップル教授らは、「ホットハウス地球軌道のリスク」と題する論文を公表し、急速な脱炭素化や大気からの大規模なCO₂除去の必要性を訴えている。
世界気象機関によれば、世界の平均気温は1850~1900年の平均より2023年は1.45℃ 、2024年は1.55℃(観測史上最高)、2025年は1.44℃高かった。人為的温室効果ガスの大量排出による地球温暖化は加速しており、20世紀半ばには世界の平均気温の上昇は10年あたり約0.05℃だったものが、現在では10年あたり約0.31℃になっている。サンゴ礁枯死の転換点を既に超え、グリーンランド氷床崩壊、西南極大陸氷床崩壊、アマゾン熱帯雨林の枯死、大西洋南北熱塩循環の停止の転換点も間近に迫っている。
気候転換点が次々と突破されると自己強化型フィードバックとティッピングダイナミックスにより、地球は年間平均気温が産業革命以前より4℃以上の超高温状態の「ホットハウス地球」に陥り、長期間継続するリスクがある。人類は文明を育むことができた比較的気候の安定した完新世から、前例のない気候変動の時代、人新世に突入しつつあるのである。ウィリアム・リップル教授らは論文の中で直接の名指しは避けながらも、“主要経済国における政策転換は、排出削減の進展を阻害し、気候の安定化を脅かす可能性がある。地球の気温を危機的なしきい値以下に抑える機会は急速に失なわれる可能性がある”と米国トランプ政権の反科学的政策を批判している。日本はこれまで以上に科学的根拠に基いて政策を立案し、サステナビリティ・ トランスフォーメーションを、急ぐべきである。
第2次トランプ政権は発足以来、わずか1年で304件の気候変動関連政策の縮小または徹回をして来たのである。
