東アフリカでは、モンスーン(季節風)によって海から来る湿った風が雨を降らし、3月から5月は大雨季、10月から12月は小雨季となります。先週のニュースレターで触れたナイロビ国立公園のヌーたちは、雨が降ると公園南方に広がる草原地域に散らばっていき、乾季になると公園周辺に戻るという移動を繰り返していますが、この営みも、このモンスーンがあってこそなんだなと改めて気がつきました。
先月ドイツのマックス・プランク研究所が公表した研究結果によると、過去800万年の間に、モンスーンの風がもっと北のアラビア半島の方まで吹いていた時代が繰り返しあったことが分かりました。そして、そのような時代、アラビア半島は湿潤で緑が豊かで、多様な動物たちが生息していました。
マックスプランク研究所、2025年4月9日)
アラビア半島ではこれまでに40万年前のワニやカバなどの化石が見つかっていたため、水が豊かな時代があったことは分かっていましたが、今回の研究では800万年前までの、長期間の(勝手にひと言で表現するなら)「雨の記憶」が見えてきました。
そんなこと、どうやったら分かるんだろうか…と思ったのですが、記事を読んでみて「お~、なるほど」と納得しました。
研究チームはサウジアラビアの洞窟7ヶ所から取った鍾乳石と石筍を調べました。鍾乳石と石筍は、地上で十分な雨が土壌に浸透し、石灰岩から炭酸カルシウムが溶け出したときにだけ形成されます。その堆積物には当時の気温や降水パターンが刻み込まれており、放射年代測定によってその年代も特定できます。調査の結果、数千年におよぶ湿潤期が複数回あったことが分かりました。
このような湿潤期の存在が、アフリカとユーラシア大陸との間で哺乳類や人類が移動することを可能にしたとも考えられるので、気候の歴史だけでなく生物の拡散の歴史を考える上でも重要な研究成果ですね。
それにしても、800万年の雨の記憶を抱えたまま、壊れることなく真っ暗な洞窟の中でじっとぶら下がってきた鍾乳石たちに「長い間お疲れさん。おかげですごいことが分かったよ」と声をかけてあげたいですね。
さて、環境省の主催で地域脱炭素フォーラムが開催されるのでご案内します。
名称: 地域脱炭素フォーラム2025 in 神戸
日時: 2025年5月25日(日)14:00~16:30
会場: 神戸国際会議場/オンライン
主催: 環境省
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
○ 基調講演1
諸富 徹氏 京都大学 公共政策大学院 教授
「地域脱炭素のさらなる前進のための連携戦略」
○ 基調講演2
井田 寛子氏 気象予報士・キャスター
「近年の異常気象と気候の変化~脱炭素社会の重要性~」
○ パネルディスカッション1
「脱炭素と地域課題の同時解決に向けて」
ファシリテーター:諸富 徹氏 京都大学 公共政策大学院 教授
パネリスト:
久元 喜造氏 兵庫県神戸市長
岡田 憲和氏 京都府京都市副市長
西村 良平氏 京都府南丹市長
小紫 雅史氏 奈良県生駒市長
○ パネルディスカッション2
「地域脱炭素の実現に向けた企業の果たす役割」
ファシリテーター:井田 寛子氏 気象予報士・キャスター
パネリスト:
乾 正博氏 シン・エナジー株式会社 代表取締役社長
植田 信一氏 大阪ガス株式会社 常務執行役員 エナジーソリューション事業部長
榊田 隆之氏 京都信用金庫 理事長
上戸 健司氏 阪神電気鉄道株式会社 常務取締役 スポーツ・エンタテインメント事業本部長
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