6月6日の朝は、実に残念な気持ちで始まりました。宇宙開発ベンチャーのispace(アイスペース)が2度目の月面着陸に挑戦したのですが、惜しくも着陸の段階で失敗に終わりました。今回の「ミッション2」には10段階のマイルストーンが設定されていて、各段階の達成基準として「打ち上げ及び分離の完了」「安定した航行状態の確立」「月周回軌道への到達」などがあり、最後の「月面着陸後の安定状態の確立」(Success 10)でミッション完了となる予定でした。
6月6日には、8段階目の「月周回軌道上でのすべての軌道制御マヌーバの完了」(Success 8)をクリアした後の、「月面着陸」(Success 9)に臨みました。月周回軌道を離脱して高度100kmから20kmまで降下し、減速を始め、ランダー(着陸船)が垂直姿勢をとったところまでは確認できたものの、その後に通信が途絶しました。おそらく十分な減速ができぬまま月面に衝突したのだろうと推測されています。
2023年4月に行われた最初の挑戦でも、この着陸の段階で不具合が生じて失敗に終わっていただけに、実に残念でした。
6日に行われた記者会見。「涙は出たりしましたか?」という質問に対し、ispaceの袴田CEOは「出そうなタイミングもあったが、涙は流さなかった。次に進む強い意志を持ち続けることが必要だと思っている。今は涙を流すタイミングではないと思っている」と答えていました。
これだけ大きなプロジェクトですから、相当なプレッシャーだと想像します。私だったら打ちひしがれて洗面器一杯の涙を流していたことだろうなぁと思い、この責任感と精神力に感銘を受けました。
しかしその後、いい知らせもありました。このランダーに月面で水素・酸素生成を行う「月面用水電解装置」を搭載していた高砂熱学工業株式会社がプレスリリースで「月面用水電解装置は、打ち上げ後、ランダーとの定期的な通信により、ロケット打ち上げ時の大きな振動・衝撃、急激な圧力低下に耐えた後も、約5ヶ月間、宇宙空間の真空・高放射線・無重力という過酷な環境に晒されながら、着陸直前まで健全な状態であることが確認されておりました」と公表し、このミッションを通じて他にもさまざまな知見を得ることができた、としています。
”月面での水素・酸素生成への挑戦に関するご報告”(高砂熱学、2025年6月9日)
https://www.tte-net.com/article_source/data/news/detail/2025/749.html
いやもう、暗闇の中に光を見出した気持ちです。よく考えたら、月面着陸こそ成功しなかったものの、逆に言えば23年のミッション1も今回のミッション2も、月の周回軌道に乗せるところまでは成功していたわけです。次のミッション3はランダーも大きくなるため、難易度は高まりますが、成功に向けて邁進して欲しいですね。
脱炭素化の取り組みや開発も、さまざまな障害があろうかと思いますが、挫けずに前を向いて進んでいきたいものです。
さて、自然エネルギー財団の主催で洋上風力発電に関するセミナーが開催されるのでご案内します。
名称: 公開セミナー「洋上風力拡大の基盤をつくる 自然エネルギー時代の送電網構築と市場設計」
日時: 2025年6月19日(木)14:00~17:00
会場: 丸ビルホール(千代田区)
主催: 公益財団法人 自然エネルギー財団
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
開会挨拶
大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事
【セッション1】「自然エネルギーはどこまでつながるか? 送電網の役割と政策・制度の最前線」
キーノート:
「デンマーク・エナギーネットの戦略」
ピーター・マルクセン エナギーネット ディレクター
パネルディスカッション:
・ボー・ノーマーク EIT InnoEnergy社 産業戦略エグゼクティブ
・西岡 淳 日立エナジー HVDCジャパン カントリーM/Sマネージャー
・大野 照男 送配電システムズ ゼネラルマネージャー
・島崎 純志 エクイノールジャパン 海洋技術マネージャー
・ピーター・マルクセン エナギーネット
[モデレーター]木村 誠一郎 自然エネルギー財団 主席研究員
【セッション2】「地域間・地域内送電網の増強に向けた官民連携:市場設計と費用負担」
キーノート:
高橋 洋 法政大学 社会学部 教授
パネルディスカッション:
・日暮 正毅 経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課長
・片岡 俊朗 東京電力パワーグリッド 経営企画室 副室長 兼 系統運用部
・松本 健一 Volue 会長
・真山 修二 住友電気工業 電力プロジェクト事業部 技師長
・真鍋 寿史 丸紅洋上風力開発 代表取締役社長
・高橋 洋 法政大学
[モデレーター]大林 ミカ 自然エネルギー財団 政策局長
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