燃える土 3,000年分の炭素を吐き出す

坂本龍馬が残した数多くの手紙の中にこのような文があります。
「小弟ハエゾに渡らんとせし頃より、新国を開き候ハ積年の思ひ一世の思ひ出に候間、何卒一人でなりともやり付く申べくと存居申候」(私は蝦夷に渡ろうとしていた頃から、新しい国を開くことはずっと思っていたことである。それは一人になってもやり遂げるつもりだ)

龍馬は元治元年(1864年)ごろから蝦夷地(北海道)の開拓への試みを始め、何度か船を蝦夷に送り込もうとしていましたが、さまざまな事情で実現できませんでした。明治2年(1869年)には明治政府によって「開拓使」が設けられ、北海道の本格的な開拓が始まりました。明治半ばから北海道への移民は急増し、開拓は大きく進展していきます。

「オホーツク開拓100年の夢 第3章 燃える土」という記事(国土交通省北海道開発局)の中に、泥炭地での開拓の苦労が描かれています。作物の栽培には不向きな土壌だし、人の重みでブヨブヨと揺れ、腰までぬかるむこともある湿地。初めて遭遇する「畑が燃える」「消しても消しても、地の底から炎が立つ」のに驚き、恐れ、火を消すために何百回とバケツで水を汲んだことがあったり、旱ばつの年には、タバコの火で土の中が10日以上も燃え続けたこともあるそうです。

こんな大変な話がある一方で、国土の2割ほどが泥炭地になっているスコットランドではこの燃える性質を生かして燃料として使っています。暖房にも使えますし、ウイスキーを作る際に泥炭(ピート)を燃やして麦芽(モルト)を乾燥させ、その煙を麦芽にあてて香りをつけているところがあります。中でもアイラ島は、泥炭を使ったシングルモルト・ウイスキー「アイラモルト」を産し、その個性的な香りは世界的に知られています。日本にも、アイラ島産のピートを輸入して麦芽の香り付けに使っている蒸溜所があるほどです。

こうした泥炭地を地球規模で見ると、地球表面の面積の3%でしかありませんが、世界中の森林が貯蔵する炭素の2倍相当の炭素が貯蔵されています。しかし開発が各地で進行し、この貯蔵されてきた炭素が大気中に放出される状況になっています。

この状況に関連して、5月に京都大学の研究結果が公表されました。

熱帯の泥炭地の炭素貯蔵庫が崩壊の危機
—人間の活動が放つ「過去3,000年分の炭素」が地球温暖化を加速させる—(2026年5月29日、京都大学)

インドネシアのカリマンタン州の泥炭地を調査したところ、たった18年間で、自然要因と人的要因(排水・火災)でなんと過去3,000年かけて蓄積されてきた炭素が大気中に放出されていたことが分かりました。

熱帯での泥炭層の蓄積には長い年月が必要で、100年でやっと20cm程度だと言われています。一年でたった2mmです。泥炭地の保全や再生の試み行われてはいるものの、こんなにゆっくり形成される泥炭層が、この破壊の速さに耐えられるのか…。これからも注目していきたいところですね。

日本の泥炭地として有名なものは、北海道のサロベツ原野や釧路湿原などがあります。福井県にある中池見(なかいけみ)湿地は、わずか25ヘクタールほどのとても小さな湿地ですが、地下40m、年月にして実に10万年分の泥炭層があり、世界的にも希少な例としてラムサール条約の登録地にもなっています。大切にしていきたいですね。

さて、科学技術振興機構(JST)と東京大学の主催で、デジタル化・AIがエネルギー転換・気候変目標に与える影響についてのセミナーが開催されるのでご案内します。

名称: オンラインセミナー「デジタル化とAIがエネルギー転換および気候目標に与える影響」
日時: 2026年6月16日(火)16:00〜17:00 
会場: オンライン 
主催: JST-低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業「カーボンニュートラル移行の加速に向けた総合知に基づく社会シナリオ」、東京大学未来ビジョン研究センター持続可能な未来のための日本モデル相互比較プラットフォーム(JMIP)研究ユニット
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 (言語は英語。同時通訳なし)

科学技術振興機構(JST)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業のセミナーシリーズのご案内です。

オックスフォード大学環境変動研究所(ECI)のエネルギー・気候変動学教授であり、オーストリアの国際応用システム分析研究所の上級研究員でもあるチャーリー・ウィルソン氏を迎え、デジタル化およびAIがエネルギー転換と気候目標に与える影響について考察します。

本講演では、デジタル化と気候目標の整合/不整合が将来に与える影響について、2050年までのシナリオをグローバル統合モデルを用いて定量的に分析します。建物、運輸、産業部門におけるデジタル技術およびAIのエネルギー影響に関する実証的知見と、再生可能エネルギー導入、蓄電、需要柔軟性といった電力システム統合におけるデジタル化の役割を組み合わせて検討します。

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