南極 水面下の動き

5月11日から5月21日まで、広島で第48回南極条約協議国会議が開催されています。南極条約は主に、
・南極地域の平和的利用
・科学的調査の自由と協力
・領土権の凍結
ということを定めた国際条約で、1959年には12カ国が参加していましたが、現在2026年時点では58カ国が参加しています。気候変動の影響を受けている絶滅危惧種コウテイペンギンの保護や観光規制についても語られますが、各国の南極活動の透明性向上も議題に上るそうです。「透明性向上」なんてと聞くと、つまりは、表にはなかなか現れないこともありそうで、ちょっと気になりますよね…。

ところで、南極では水面下で確実に動きがあるようです。海の話です。
Warm Waters Are Usually Trapped Deep Within the Southern Ocean. Now, They’re 
Encroaching on Antarctica, Threatening Its Ice
(暖かい海水は通常、南極海の深部に閉じ込められている。しかし今、それらは南極大陸に侵入し、氷を脅かしている)(2026年4月28日、スミソニアン・マガジン)

これまでの南極は、冷たい水の層に守られて、海氷が溶けないようになっていました。ところが最近の研究で、海の深層にある温かい水が、過去20年間のうちに海面のそばまで近づいて来ていることが分かりました。研究者は、この状況を「今までは冷たい水の入ったお風呂の中で棚氷は溶けずにすんでいた。ところがいま、誰かが熱い蛇口をひねって、お風呂がどんどん温まっているようなものだ」と例えています。

陸上の氷河が押し出されて、陸の氷と繋がった状態で海上に浮かんでいる部分を棚氷(たなごおり)と言いますが、この棚氷は、陸上の氷河・氷床が海に滑り落ちないように支える堤防のような役割を果たしています。しかし深層から上がってくる温かい水によってこの棚氷が溶けたり陸の氷から切り離されたりすると、陸上の氷が海に流出して溶けやすくなってしまいます。

この海の中の異変を突き止めたのは、世界中の海にフロート型計測器を浮かべているアルゴというプロジェクトです。2026年5月12日時点でなんと4,358個が浮かべられています。「え、よ、4千個?ほんとに?」と思ってしまいますが、こんな感じでまさに世界中にばら撒かれています。

Argo’s Staus(アルゴの状態, サンディエゴ大学「アルゴ」)
https://argo.ucsd.edu/about/status/

先ほどのスミソニアンマガジンの記事の中にもアルゴの紹介動画がありますが、アルゴでは、海水温や塩分濃度などを自動計測します。これに、船で直接測った貴重なデータを組み合わせて、人工知能を使って詳しく分析した結果、海の中で何が起きているのかが初めてはっきりと目に見える形になります。

また、別の調査では「風」の影響も指摘されています。2016年ごろから、気候変動が原因とみられる強い風や嵐が、冷たい表面の水を押し流してしまいました。そのせいで、深部に溜まっていた熱が噴出すような形になり、南極の海氷が劇的に減ってしまったのです。

当然、南極で起きているこの熱の動きは、単に氷を溶かすだけではありません。南極の海は、世界中の海をめぐる「ベルトコンベア」のような大きな流れの出発点でもあります。ここで冷たくて重い水が沈み込むことで、地球全体の熱や炭素を運んでいるのですが、海が温まることでこの大切な循環が弱まってしまう恐れがあります。同時にいろいろなことが起こるんですね。

南極条約会議が日本で開催されるのは32年ぶりだそうです。遠い遠い南極ですが、こんな機会ですから、何が起きているのか考えてみるのもいいですね。

さて、WWFジャパンとAlliance for Water Stewardshipの主催で「水・生物多様性・気候変動」に関わるセミナーが開催されるのでご案内します。

名称: 企業向けセミナー:「水破産」時代に求められるウォーター・スチュワードシップの実践― 水・生物多様性・気候変動のつながりを捉えた対応
日時: 2026年5月25日(月)14:00~19:00 
会場: 国連大学/オンライン 
共催: WWFジャパン、Alliance for Water Stewardship(AWS)
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

○ はじめに
WWFジャパン自然保護室淡水グループ長
小林 俊介

○ 基調講演「共通項としての水:報告書『Global Water Bankruptcy』が示す課題と視座」
国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH) 所長 カーヴェ・マダーニ(録画登壇)

「現場から見たコミュニティの水リスクとその民間企業のサプライチェーンとのつながり」
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS) 学術事業アドバイザー および 早稲田大学教授 勝間 靖

「ウォーター・スチュワードシップと水・生物多様性のネクサス~ICTセクター、食品セクターなど企業事例紹介~」
WWFインターナショナルグローバル・ウォーター・スチュワードシップ副リーダー ライラン・ドブソン

「AWS国際ウォーター・スチュワードシップ規格バージョン3.0のポイント」
Alliance for Water Stewardship (AWS)  セクターコーディネーター・日本 難波 圭

「アパレル・繊維産業の水リスク:ウォーター・スチュワードシップと淡水生態系保全の現場事例~トルコ・ブユックメンデレス川の取り組み~」
WWFジャパン自然保護室淡水グループ 金 惠娜

○ 事例発表・パネルディスカッション
・サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部天然水の森 グループスペシャリスト 市田 智之
・株式会社資生堂 那須工場 田口 邦彦
・日本コカ・コーラ株式会社 広報・渉外&サステナビリティ推進本部 シニアマネージャー 李貞恩(アンジェラ)
・WWFジャパン自然保護室淡水グループ 羽尾 芽生(モデレーター)
※その他登壇者調整中

・パネルディスカッション
「水資源保全から見えてきた生物多様性の視点」
「流域の視点とステークホルダー協働の重要性」

詳しくはこちらをご覧ください。