広島で5月11日から行われていた第48回南極条約協議国会議(ATCM48)が21日に終了しました。
外務省のサイトに5月21日付の報道発表があります。
主な成果を簡単にまとめるとこんな感じです。
(a) 南極の環境保護
2件の南極特別保護地区(ASPA)が新たに指定された。コウテイペンギンの保護に向けた適切な手法について検討を継続する。
(b) 透明性向上
各国の南極での活動について、情報共有を促す内容の決議を採択。
(c) 観光枠組み
規制・管理の具体的な方法及びモニタリングの手法等について、会期間にも議論を継続する。
(d) 教育・アウトリーチに関するワークショップ
第5回国際極年(2032ー33年)に向けた自国の取組について、常時意見交換を行えるよう、オンラインフォーラムを立ち上げる。
(e) 協議国資格
カナダ、ベラルーシ及び、トルコの申請について、協議を続ける。
コウテイペンギンの保護については、具体的なことは決まらなかったようですね。全会一致で物事を決めるのってやはり大変ですね。こうした成果を見て、「いろいろあるけど、自分が一つだけ覚えておくとしたらこれかな…」と思ったのは「南極特別保護地区」のことです。こんなものがあるなんて知らなかったので新鮮でした。
最初は1964年に南極独自の生態系保護を目的に「特別保護地区(SPA, Specially Protected Areas)」というものが設置されていましたが、1972年に新たなカテゴリーの「特別科学的関心地区(SSSI, Sites of Special Scientific Interest)」が追加されました。
2002年になってこれらは統合されて「南極特別保護地区」(ASPA, Antarctic Specially Protected Areas)になりました。環境上、科学上、歴史上、芸術もしくは原生地域としての顕著な価値を有する地区です。環境省の「南極の環境データベース」にそのリストとそれぞれの保護地区の詳細が掲載されています。
環境省:南極特別保護地区の概況及び管理計画
なにげなく試しに「第140南極特別保護地区:サウス・シェトランド諸島のデセプション島」(このサイトでの表記は第四十)の「範囲」を見てみたら、面食らってしまいました。区域の範囲を一文で示しているのですが、これがとてつもなく長い。「この地区は、南緯62度59分47秒西経60度35分19秒の地点を起点とし、同地点から標高10メートルの等高線を南東に進み…」に始まり、「…南緯62度58分57秒西経60度31分19秒の地点に至り、同地点から氷河の縁を北東に進み、起点に至る線により囲まれた区域(次の地図の斜線部分)から成る。」まで、だいたい2,900文字です。400字原稿用紙で7枚以上です。生まれてこの方、こんなに長い一文を目にしたことはありませんし、読書感想文でもこんなに書いたことはありません。この文書を作成するのはなかなかの苦行だったのではないでしょうか…。
でも、日本の提案で指定された第141南極特別保護地区(リュツォ・ホルム湾のラングホブデの雪鳥沢)には、南極の固有種「ユキドリ」にちなんで名付けられた「雪鳥沢」という地名があることや、それがそのままYukidori Valleyとして国際的に登録されていることを初めて知ることもできました。南極に日本語の地名があるのって、他にも大和雪原(Yamato Yukihara)とか大隈湾(Okuma Bay)などいろいろあるそうですが、なんかいいですね。南極観測隊のブログで、ここで行われているモニタリング調査について触れられています。
国立極地研究所:陸域生態系変動のモニタリング(2026年1月6日)
次の南極条約協議国会議は来年5月に韓国で開催されます。その時にはまた少しでも進展があるといいですね。
さて、日本学術会議の主催で海洋生物と気候変動に関するシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: 公開シンポジウム「海洋生物と気候変動:考えるべき倫理」
日時: 2026年6月7日(日)13:00~16:00
会場: オンライン
主催: 主催:日本学術会議基礎生物学委員会・統合生物学委員会合同海洋生物学分科会
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
【基調講演】
「見知らぬ海と生きる:創造的介入の時代の倫理」
福永 真弓(東京大学教授)
「気候変動下のサンゴ礁保全における人為的介入の思想系譜と現在ーAssisted Evolutionの言説をめぐって」
長谷川 健司(東京外国語大学講師)
「海洋CDRとしてのブルーカーボン大規模養殖・深海貯留の可能性と課題:法政策の視点から(仮)」
藤井 麻衣(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
【パネルディスカッション】
「人為的介入と倫理」
パネリスト:福永 真弓(東京大学教授)
長谷川 健司(東京外国語大学講師)
藤井 麻衣(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
モデレーター:安田 仁奈(日本学術会議連携会員/東京大学教授)
詳しくはこちらをご覧ください。
