こんなにビシッと言い切るのは50年の歴史上で初めてのことだそうです。9月3日に世界気象機関が「いま発生しているエルニーニョ現象は極めて強くて、ほぼ100%の確率で来年2月まで続く」とのプレスリリースを出しました。
El Nino set to become very strong, raising risks of extreme weather into 2027
(エルニーニョ現象が非常に強くなる見込みで、2027年まで異常気象のリスクが高まる)(世界気象機関、2026年9月3日)
プレスリリースによると、エルニーニョの指標となるNino 3.4領域の海面水温偏差は、2026年5~7月の平均+1.5℃から7月には+2.0℃に達し、8月中旬には+2.2℃~+2.6℃まで上昇しました。さらに、海面下の水温が平年より8℃以上高い地域もあり、今後のさらなる発達と長期化を強力に支えています。
気温への影響:2026年9月から11月にかけて、ほぼすべての陸地で平年より高い気温となる確率が増加しています。
降水量への影響:太平洋熱帯域の急速な温度上昇に反応し、地域ごとに極端な大雨や乾燥が見込まれます。
他の気候要因との連動:インド洋ダイポールモード現象(IOD)の正の相(約+0.9℃)の発生や、大西洋熱帯域の海水温上昇が重なるため、地域によってはエルニーニョの影響がより増幅・変容する可能性があります。
これだけ切迫した状況になると、つい「今すぐなんとかできないかな….」と思ってしまいます。そういう目で見ると余計に気になる研究があります。海上の雲を明るくして、太陽光の反射率を上げて温暖化を抑制する、「海洋雲増光」(Marine Cloud Brightening、MCB)という方法で、1990年にイギリスの物理学者ジョン・レイサムが提唱したものです。海水などを微細な塩の粒子(エアロゾル)にして空中に散布し、海上の雲の中へ送り込みます。この粒子が核となり、雲を作る水滴の数が大幅に増えることで雲全体がより白く明るくなり、太陽光の反射率が高まります。
実はこの現象は意図しないところですでに起こっていて、その事例として船舶の排気が知られてきました。船舶の排気に含まれるエアロゾルによって細長い雲が形成され、「船舶の航跡」(ship tracks)と呼ばれています。また、2019年から2020年にかけて発生したオーストラリアの大規模森林火災で発生した煙(バイオマス燃焼エアロゾル)がラニーニャ現象(2020年~2023年)の発達に寄与したことも知られています。
オーストラリアではグレートバリアリーフを海水温上昇から守るための対策として、2020年からMCBの実証実験を行なっています。
サザンクロス大学:Marine Cloud Brightening
今年7月に発表された論文では、オーストラリアで起こった火災・煙の発生・MCBの効果を踏まえたモデルをつくり、さらにそのモデルの中で、過去のエルニーニョ現象2件を再現し、MCBがエルニーニョに及ぼす効果を測定しました。
Targeted marine cloud brightening weakens subsequent El Nino(狙いを定めた海洋雲増光がその後のエルニーニョ現象を弱める)(ScienceAdvances, 2026年7月8日)
その結果、特定の海域でエアロゾルを散布して雲を明るくすることで、エルニーニョの発達を妨げ、世界各地の気温上昇や降水パターンの変化を緩和できることが示されました。特に、エルニーニョ現象が本格化する前の早期介入が最も効果的ですが、一方で次段階のラニーニャを早めるといった予期せぬ副作用の懸念も指摘されています。
こうした気候工学的な手法は、広い海域で実施するとなると国際海洋法との兼ね合いや副作用の懸念などいろいろな課題があるようですが、うーん、なんとかなるといいですよね…。
さて、文部科学省の主催で「海から見る地球温暖化」というテーマでシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: 気候変動予測先端研究プログラム令和8年度公開シンポジウム 海から見る地球温暖化 ~変わりゆく海が教えてくれる地球の今~
日時: 2026年9月15日(火)13:00~15:50
会場: オンライン
主催: 文部科学省 気候変動予測先端研究プログラム
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
文部科学省の「気候変動予測先端研究プログラム」では、気候変動メカニズムの解明や自治体・民間企業等の気候変動対策におけるニーズを踏まえた高精度な気候変動予測データの創出などを通じて、私たちが直面している気候変動・地球温暖化の問題に取り組んでいます。本プログラムは、気候変動の最新の知見を世界に発信する「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の評価報告書や、世界中の研究機関が協力する気候予測プロジェクト「結合モデル相互比較プロジェクト」(CMIP)へ重要な貢献を果たすことを目的の一つとしています。
本シンポジウムでは、「海から見る地球温暖化 ~変わりゆく海が教えてくれる地球の今~ 」をテーマに、プログラム内から3名の研究者が発表を行い、海と大気の関わりからプランクトンをはじめとした生き物や人間社会への影響まで、海でも進んでいる地球温暖化について分かりやすくお伝えします。
詳しくはこちらをご覧ください。
