宇宙開発が進む現代でも、深海には未だ解明されていないことが数多くあると聞いたことがあります。それでふと思いついたのは月面探査と深海底の違い。月の地表面は丸見えなのでほとんどの場所を高解像度の画像で見ることができます。1959年にはソ連の探査機ルナ3号が初めて月の裏側を撮影しましたし、2009年からはNASAのルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter, LRO)が月面の高精細画像を撮影していて、過去の宇宙飛行士の足跡や月面探査車の轍なんかも捉えられているほどです。しかし、深海の底となると、遠くは見通せないし、ましてやLROのように秒速1.6kmですっ飛びながらバシバシ撮影するなんてことはできません。深海で何が起きているのか。これを解明するにはまだまだ時間がかかりそうです。
9月3日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、深海底に沈むプラスチックなどのマクロごみ(2cm~1mほどの目に見えるゴミ)を自動で検出・計数するAIを開発したと発表しました。
深海底のプラスチックごみを自動検出・計数するAI「DeepLitterAI」を開発
~広域映像からのプラスチックごみの発見とカウントの高速化により、地球規模の海洋汚染モニタリングに貢献~(JAMSTEC、2026年9月3日)
過去40年以上にわたって撮影された深海映像から、12,029枚のオリジナル画像を集めたデータセット「J-Litter」を新たに構築。これらの画像には従来の見落としの原因であった画面サイズの10%以下の小さなごみや、見間違えやすい生物・海底の地形などの画像が大量に含まれていました。最新の物体検出技術に学習させるとともに、同じごみを重複してカウントしない物体追跡アルゴリズムを導入しました。そして水深860~5,600mの日本周辺海域で撮影された実際の映像を用いて性能を検証しました。
このAIを使うと、人間による目視解析と比較して、平均2.1倍(最大3.1倍)の速度で完了します。手作業で約1か月かかっていた100時間分の映像解析が、わずか数日で完了できたそうです。さすがAI。信じられないほど効率が上がりますね。それにしても、これまでこの作業を粘り強く長時間かけて行ってきた方々の苦労を思うと頭が下がる思いです。
また、小さなごみや背景の学習をしているので、プラスチック袋やペットボトル、空き缶などを従来のAIモデルの約1.6倍の精度で正確に発見できるようになっています。専門家による目視確認の結果と比較しても、誤差約10%程度という同等の精度でごみの個体数を正確に算出できます。
これほどの性能があれば、海洋研究に大きく貢献できそうです。
・深海ごみマップ: 膨大な深海映像から自動でごみを抽出し、高精度な深海底ごみ分布マップを迅速に作成できます。
・削減対策の検証: 国際プラスチック条約に基づく各国のプラスチック削減対策が、実際に深海のごみ削減に繋がっているかを科学的・客観的に検証する基盤となります。
・リアルタイムモニタリング: 探査機等にAIを搭載することで、現場でのリアルタイム検出やごみのホットスポット特定が可能になり、効率的な海洋環境モニタリングに寄与します。
深海底の実相にまた一歩人類が近づいた感じがしますね。
さて、環境省の主催でプラスチック汚染に関するシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: 令和8年度プラスチック汚染とその対策に関するシンポジウム
日時: 2026年9月28日(月)13:00~16:40
会場: 御茶ノ水ソラシティ(千代田区)/オンライン
主催: 環境省
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
「プラスチックの環境対応に関する国際動向」
植田 洋行(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 地球環境部 上席主任研究員)
「マイクロプラスチックに関する国内外の動向」
鍋谷 佳希(みずほ総合研究所 サステナビリティコンサルティング部)
「陸域からのプラスチックごみ排出と海域流出 -その実態と課題-
藤原 拓(京都大学 大学院地球環境学堂 教授)
「海底にたまるマクロプラスチックごみ -その由来・影響と回収への道筋-」
東海 正(東京海洋大学 名誉教授)
「マイクロプラスチックの生態影響評価の現状と課題
―タイヤ由来粒子を中心としたリスク評価研究の展開―」
仲山 慶(愛媛大学 沿岸環境科学研究センター 化学汚染・毒性解析部門)
「生分解性樹脂等を活用したプラスチックごみ対策」
粕谷 健一(群馬大学 大学院理工学府 教授)
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