8月26日にネパールで起きた大規模な土石流の原因について、氷河湖の決壊による洪水だという見方がありましたが、要因はもっと複雑にからみあっていることが分かってきました。
世界気象アトリビューション(WWA, World Weather Attribution)が9月17日に報告書を公表しました。
Rapid Warming in the Himalaya Exacerbates Geohazard Cascades Beyond Adaptation Limits
(ヒマラヤにおける急速な温暖化は、適応の限界を超えて地質災害の連鎖を悪化させている)(WWA, 2026年9月17日)
氷と岩壁が崩落しました。その発端は、ネパールのランタン国立公園にあるランタン・リルン(Langtang Lirung)という山(標高7234m)の北側斜面で、標高5,150メートルの地点でした。
地震は後で検知された:
洪水が起こった当初は、地震が原因として挙げられていましたが、のちにこれは約2平方キロメートルに及ぶ膨大な量の岩と氷河が急速に崩壊し、1,400メートルほど下の谷底まで落下したことで起こった地震波だったことが分かりました。
岩氷雪崩:
氷や岩が急速に斜面を下っていく過程で摩擦と機械エネルギーによって氷の一部が溶けて大量の融水が発生。崩落した氷や岩が谷底に到達すると、埋もれていた氷にぶつかって、それが融けて洪水に水が追加されました。この結果、氷河の融解、氷河の下や永久凍土に蓄えられた水、土砂の中に含まれていた氷と水、流れの前方に押し出されていた河川水といった複数の水源によって引き起こされた可能性が高いそうです。
斜面の崩壊の素地:
2015年にマグニチュード7.8の地震がランタン・リルンで壊滅的な岩氷雪崩を起こしました。その後のモニタリングでは地滑りが継続的に増加していることが示されています。こうした地震の揺れが長期的に岩盤を弱体化させた可能性も示唆されています。
温暖化と永久凍土の劣化:
岩盤温度の上昇と、岩盤の亀裂内の氷が融けることで岩盤が弱体化したことが考えられます。また、氷河が融けて薄くなると、岩盤を抑える力が弱くなり、不安定化した可能性があります。現地では2025年9月から2026年8月までの12ヶ月間は異常に暖かい気候が続いていました。
降雨量:
長い雨、激しい雨によって降雨量が増加すると岩盤の亀裂に水が急速に入り、亀裂内の水圧が高まり、崩壊しやすくなります。今回崩落が発生した地域では、2025年10月に異常に高い降水量が記録されています。
今回の岩壁の雪崩と土石流は、人為的な気候変動が無かったとしても発生したか?:
この点については評価していません。直接的な原因を特定するためにはさらなる証拠が必要なためです。大気の状態・地下の温度・亀裂の水圧・斜面の力学的変化といった要素ついてもっと分からなければ断定できないということです。しかし、「化石燃料の排出による世界平均を上回る急速な気温上昇は、ヒマラヤにおけるこのような災害の発生確率と深刻度を高めています」と結論しています。
今後について:
将来のリスクを最小限に抑えるために必要なこととして、
・化石燃料の使用からの速やかな脱却
・気候変動対策のための資金拠出の約束履行
をあげています。
また、これらの施策はヒマラヤ山脈をはじめとする高山地帯において特に重要だとしています。なぜならこれらの地域では、温暖化がこれ以上進行しなくても氷河の縮小や永久凍土の劣化が続くと予想されていて、これまでの温暖化による影響の一部がまだ完全には現れていないから、とのこと。
人為的な気候変動のせいであるか否か。それがなくても起こっていたのか否か。科学的に慎重に、総合的に判断しようとするとなかなか物事は断定できないものです。ただ気候正義を求めるネパールの立場からすると、見る角度によってはひょっとしたら”逃げの姿勢”にも映ってしまうかもしれません。科学、政治、経済、歴史、法律、人々の感情。自然現象の要因も複雑ですが、人間社会はさらに複雑です。なかなか難しい話ですね。
さて、株式会社エリナスの主催で脱炭素化時代の経営戦略に関するサミットが開催されるのでご案内します。
名称: エナリス脱炭素サミット2026 脱炭素“義務化時代”を生き抜く経営戦略 ~産官学の視点から紐解く、規制対応のリアルと事業継続のためのロードマップ~
日時: 2026年10月20日(火)13:15~16:30
会場: オンライン
主催: 株式会社エリナス
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
○ オープニング
株式会社エナリス 代表取締役社長
鈴木 吾朗
○ 基調講演
・東京大学大学院 教授 エネルギー・資源学会 会長
松橋 隆治 氏
・東京大学 生産技術研究所 教授
岩船 由美子 氏
・経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギーシステム課長
渡辺 信彦 氏
・環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 脱炭素ビジネス推進室長
小野 裕永 氏
○ 企業講演
・株式会社竹中工務店 環境共生・エネルギー本部 エネルギーグループ 専任課長
粕谷 文 氏
・大塚ビジネスサポート株式会社 エネルギーサポート部長
柴田 哲也 氏
・株式会社エナリス 専務執行役員 事業戦略本部長 兼 みらい研究所長
小林 輝夫
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