「千年に一度の大雨」と南北の不平等について

中国河南省の豪雨。地元気象局は「千年に一度の大雨」と言っているそうです。

「千年に一度」?

2021年7月14日付けのお知らせ「米国とカナダでの熱波について」でも、「千年に一回しか起こらないものだった」としています。

その根拠が「イベント・アトリビューション」。異常気象が一体どれくらい異常なのかを調べる方法として盛んに研究が進められています。

今回、この応用版ともいえる研究が広く報道されています。たとえば、朝日新聞デジタルの「祖父母が知らぬ猛暑、孫は生涯で400回 温暖化進むと」という記事。何と日本発の成果です。

記事によると、私たちが経験したこともない猛暑を孫は400回も! これは驚きの結果です。

ところが原著論文は、その上をいっています:「平均気温が4.5℃上昇する場合、一部の熱帯域では、孫世代は祖父母が経験したことがない暑さを生涯で1000回以上出会う」。

ここで考えます。朝日新聞デジタルが報じている「平均気温が4.8℃上昇する場合、孫世代は祖父母が経験したことがない暑さを生涯で400回程度経験する」との違いは、一体、何でしょうか。

それは、「二酸化炭素の排出が少なく収入が低い国ほど温暖化の被害が大きい」という南北問題です。

実は、「平均気温上昇が2℃に抑えられれば、猛暑の回数が桁違いに減るうえに南北の不平等も小さくなる」という結果も論文は示しています。

孫子の安寧を思いやることが気候正義にも沿う。南北の不平等を和らげ、安全保障につながる。必死で実質ゼロを目指さない理由はありません。