8,000km  サハラに緑の長城

世界最大の砂漠、サハラ。私たちは砂漠になった姿しか目にしたことがないのでちょっと想像し難いのですが、過去には森林が広がっていた時代もあります。1万年前、最終氷期の終わり頃からこの地域は湿潤化し、5,000年前まではサバンナや、ステップ、森林が広がり、豊かな動物相と植物相がありました。その後、乾燥化が始まり、現在も砂漠化が進んでいます。

1968年から1973年にかけて大規模な干ばつが起こり、2500万人が被災。この地域の砂漠化を止めて緑化しようという運動が起こりますが、大きな成果を生むに至りませんでした。2007年になってアフリカ連合(African Union)の主導でこの運動が再開され、アフリカ大陸西端のセネガルから、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、スーダン、エリトリア、
エチオピア、そしてジブチに至る8,000kmの緑の壁を作ろうという世界最大級の緑化事業「the Great Green Wall (GGW)」として進行中です。

The Great Green Wall Trailer – 2021 New African Film Festival

この地域での緑化事業は、地球温暖化への対策にとどまらない重要な社会的意義があります。砂漠化は農地や牧草地の消失を意味し、それはつまり生活の基盤を失うことを意味します。地域経済は脆くなり、社会は不安定化し、多くの人々が故郷を出て行きます。武装勢力の跋扈や、人身売買の増加といった深刻な問題にまで波及しています。

2020年9月に公表された報告書にこれまでの成果が書かれています。ポイントを拾うと、

・約2,000万ヘクタールの砂漠に緑が戻った。
・35万人の雇用が創出された。
・約9,000万ドルの収入が生み出された。

とあり、そして、2030年までの目標として、

・1億ヘクタールの緑を回復する。
・1,000万人の雇用を創出する。

とあります。

壮大な計画で、その道のりは決して平坦ではなく、木を植えてもすぐに枯れてしまって元の砂漠に戻ってしまうことも多いようです。

国際社会が協力して、プロジェクトが少しずつでも前進し、気候変動への対応だけでなく、この広大な地域の人々の暮らしが改善されることを期待したいですね。