プラスチックを食らう細菌 ただいま増加中

最近、恐竜がたくさん出てくる映画を見かけたせいか、ついつい恐竜のことが気になります。福井県立恐竜博物館には、全長4mほどの「フクイラプトル・キタダニエンシス」の全身骨格が展示されています。肉食恐竜で有名なアロサウルスの仲間で、発掘地の北谷(きただに)町にちなんだ学名が付けられています。日本の肉食恐竜として初めて全身骨格が復元されたものなので、なかなか重要な恐竜ですね。

これとはまったく違う生き物ですが、発見地にちなんだ学名がつけられているものに「イデオネラ・サカイエンシス」があります。サカイ?ほんまかい?と一瞬思ってしまう名前なのですが、実はこれ有益な微生物を20年にわたって探し続けていた京都工芸繊維大学の小田耕平氏が大阪府堺市で発見した細菌で、ペットボトルの原料のPET(ポリエチレンテレフタラート)だけを食べて生きられるという驚きの性質を持っています。この発見はその後、2016年に”A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate)”(PETを分解・資化する細菌)という論文(共著者:
吉田昭介,宮本憲二,小田耕平ら)に結実します。

小田耕平氏の当時のインタビュー記事が興味深いです。

このイデオネラ・サカイエンシスがPETを分解できるのは、彼らが持っている酵素の働きによるのですが、プラスチックを分解できるこのような酵素についての研究は未知の領域が大きく、2021年10月に発表されたスウェーデンのチャルマース工科大学の研究によると、プラスチック汚染が深刻化するのに応じてプラスチック分解酵素の量も種類も増加しているそうです。研究では30,000以上の酵素の”同族体”が発見されており、よく使用されるプラスチック10種類を分解できる可能性を持っているそうです。

Plastic-Degrading Potential across the Global Microbiome Correlates with Recent Pollution Trends

イギリスやアメリカの研究ではイデオネラ・サカイエンシスの酵素から新しい酵素を作り出していますし、フランスのカルビオス(Carbios)社はプラスチックと繊維のリサイクルを独自の酵素を使って産業化に成功しています。同社は昨年12月にパリで世界初のPETバイオリサイクルサミットを開催しました。

プラスチックの分解について、これからも新しい発見が続きそうですね。

さて、大阪でプラスチック廃棄物に関するシンポジウムが開催されるので、ご案内します。

名称: カーボンニュートラル・プラごみゼロ対策技術シンポジウム 
    2050年持続可能な大阪の実現に向けた環境技術のイノベーション

日時: 2023年2月20日(月)13:30~16:30
会場: オンライン
主催: 大阪府
参加費: 無料
主な内容:
・大阪・関西万博、その先の持続可能な未来社会実現のために大阪ができること
 カーボンニュートラル・プラごみゼロ対策技術の普及の方向性
  大阪府 環境農林水産部
 
第1部 カーボンニュートラル社会実現への挑戦
基調講演:
・カーボンニュートラル社会の実現に向けた2050年までの環境・エネルギー技術のあるべき姿と 国内・国際の動向
  公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ
  グループリーダー・主席 秋元 圭吾 氏

・持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に向けた企業の挑戦(1) 
 カーボンニュートラル社会実現に向けた大阪ガスのビジョン
  大阪ガス株式会社 経営企画本部 企画部
  カーボンニュートラル推進室長 桑原 洋介 氏

・持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に向けた企業の挑戦(2) 
 メタネーションの普及に向けた日立造船の取組み
  日立造船株式会社 開発本部 戦略企画部
  担当部長 冨山 茂男 氏
 
第2部 大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実現への挑戦
基調講演:
・海洋プラスチックごみ対策の取組み・国内動向と2050年までの資源循環型社会のあるべき姿
  大阪大学大学院 工学研究科応用化学専攻
  教授 宇山 浩 氏

・大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実現に向けた企業の挑戦(1) 
 生分解性プラスチックの実用化に向けたカネカの取組み
  株式会社カネカ Global Open Innovation企画部
  福田 竜司 氏   

・大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの実現に向けた企業の挑戦(2) 
 資源循環の促進に向けた双日プラネットの取組み
  双日プラネット株式会社 環境サステナブル事業室
  室長 片岡 幹芳 氏

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