やっかいすぎる タフで侵略的な外来種

IPBESという組織があります。正式名称は、-ちょっと長いので深呼吸してから読んだ方がいいのですが-、「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」(Intergovernmental Science-Policy Platform on Biodiversity and Ecosystem Services)です。このIPBESが四年以上かけてまとめた報告書によると、私たち人間の活動によって37,000種の動植物が新たな生息地に外来種として定着していて、その1割近くが「侵略的外来種」と呼ばれているそうです。あまりに繁殖力が強いために既存の生態系に破壊的な影響を及ぼしており、そこから生ずる経済的な損害は2019年時点で、なんと4,230億ドルを超えているそうです。

8月にハワイ・マウイ島で起きた山火事では大変な被害が起きています。この火事の原因については、5月から続いていた乾燥状態とか、ハリケーンの強風、切れた送電線などが挙げられていますが、重要な要素の一つとして外来植物が挙げられています。

TIME: Invasive Plants Brought to Maui by Colonists Helped Fuel the Wildfires
https://time.com/6305735/invasive-plants-from-colonists-fueled-maui-wildfires/

ハワイには、18世紀末以降に入植した人々が牧草や土壌浸食防止、装飾などの目的で持ち込んだ外来種が79種類以上あります。現在、ハワイの地表面積の4分の1近くを覆っているのは外来植物で、アメリカ農務省はそのうちの18種について、山火事のリスク要因になると指摘しています。

「外来種」と聞いただけで、まあなんとなく悪い影響がありそうだ…、という印象は持ちます。でも、実際のところ、なぜ外来の植物が火事の原因になるのでしょうか。実は、これらの植物は乾燥が早いのに、腐敗しにくいという特徴があるのだそうです。このことは、雨が減って乾燥した時期に、高く成長したまま立ち枯れている、つまり非常に燃えやすい草むらが広がってしまう状況をつくってしまいます。そして、さらにまずいことに、これらの外来種は乾燥に強いため、山火事の後も、在来種より早く回復します。つまり、火事が起こると、それらの外来種の生息地がよけいに広がっていくわけです。…まったくやっかいな相手です。

人間と自然環境との関わり。まだまだ知らないことがたくさんありそうです…。

さて、「地球環境変化の人間的側面研究からのSDGsへの貢献の現状と展望」というタイトルで行われる、日本学術会議の公開シンポジウムについてご案内します。

名称: 日本学術会議公開シンポジウム
    「地球環境変化の人間的側面研究からのSDGsへの貢献の現状と展望」
日時: 2023年9月27日(水)13:00~16:00
会場: オンライン
主催: 日本学術会議地域研究委員会・環境学委員会・地球惑星科学委員会合同 
    地球環境変化の人間的側面(HD)分科会
参加費: 無料

主な内容: 下記HPより抜粋

総合司会:竹中 千里(日本学術会議連携会員、名古屋大学名誉教授)

・開会挨拶 氷見山幸夫(日本学術会議連携会員、北海道教育大学名誉教授)

・趣旨説明 氷見山幸夫(日本学術会議連携会員、北海道教育大学名誉教授

・農業における資源利用の観点からのSDGs達成に向けて
荘林幹太郎(人間文化研究機構総合地球環境学研究所特任教授)

・森林における物質循環の観点からのSDGs達成に向けて
竹中千里(日本学術会議連携会員、名古屋大学名誉教授)

・社会の目標とビジョン設定におけるヒューマニティーの視点
谷口真人(人間文化研究機構総合地球環境学研究所副所長・教授)

・社会変革のための学習プロジェクトからのSDGsへの取組
阿部健一(日本学術会議特任連携会員、人間文化研究機構総合地球環境学研究所教授)

・地理情報科学からのSDGsへの取組
山下潤(日本学術会議連携会員、九州大学大学院比較社会文化研究院教授)

・SDGsターゲット指標への関りから学んだこと
渡辺浩平(日本学術会議連携会員、帝京大学文学部教授)

・ディスカッション
司会:春山成子(日本学術会議会員、三重大学名誉教授)
コメンテーター:秦範子(都留文科大学教養学部地域社会学科非常勤講師)

・閉会挨拶  春山成子(日本学術会議会員、三重大学名誉教授)

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