大西洋子午面循環の崩壊 気候転換点を超える寸前

血液型や星座、干支で人を分類したり性格を判断したりするのはどうもな~…ということもあって、干支の順番すら「子、丑、寅、卯、辰、巳…」くらいまでしか言えないのですが、こんなことではいけないと反省しました。

「大西洋子午面循環」という言葉を見たときに、「”子午面”か…。”子午線”と関係ありそうだな…」と思ったのですが、「ところで”子午”ってなんのことなんだ?」という疑問が湧いてきました。

調べたら、江戸時代の頃までは方角や時刻を干支で表していて、「子(ね)」は北で、「午(うま)」は南をさしているそうではありませんか。だから地球の南北を結ぶ線を子午線といい、その子午線が作る平面、赤道と直行する面を「子午面」というのだと。

なるほど、そうか!…と思ったのですが、これはたぶん、ふつうに干支を知っている人ならすぐにピンとくる話なのでしょうね。いやはや、自分にとっては新しくても、世の人々にとっては当たり前であろう知識にでくわした時の、なんともいえない複雑な気持ちです。

大西洋において表層流が暖かい海水を北に運び、それが北の寒い海で冷えて深層に沈み込む。そして沈み込んだ水が今度は南に移動して世界中の深海に広がっていく。この、海水が南北を移動し、そして表層と深層を行き来するこの循環のことを大西洋子午面循環(AMOC, Atlantic meridional overturning circulation)と呼んでいるわけです。現在地球の温和な気候が保たれているのは、こうした熱の大循環があるからです。

AMOCの動きが停止、あるいは崩壊することは、気候のティッピング・ポイント(CTP, Climate Tipping Point) の一つです。今年5月にCENと日本能率協会コンサルティングが行なった「社会的ティッピングポイントに関する意識調査」(監修:東京大学名誉教授 山本良一先生)では、16の自然崩壊現象で示される気候ティッピングポイントの中で、AMOCの崩壊に関する認知率が11.4%(16項目中の下から4番目)と、かなり低いことが明らかになりました。

「社会的ティッピングポイントに関する意識調査結果」

どうして認知率が低いのでしょうか…。大西洋の海流システムの変化は氷床崩壊や森林火災といったビジュアル的に分かりやすい変化ではありませんし、ニュースでもあまり聞かないせいかもしれませんね。

だからといってその重要度が低いわけではありません。その緊急性はむしろ増しているようです。最新の研究によれば、AMOCの衰退が従来の予測よりも早く進行しており、ティッピングは早ければ今世紀半ばに起こるとしています。

最新研究の情報:
Warning of a forthcoming collapse of the Atlantic meridional overturning circulation 
(やがて来るAMOC崩壊についての警鐘)
Nature Communications 14, Article number: 4254 (2023) 2023年7月25日

AMOCの崩壊は世界規模で急激な気温変動や降水パターンの変化、海洋生態系の変化、海面上昇の加速、気象パターンの変動など、さまざまな影響を及ぼします。もちろん日本をとりまく環境にも大きな変化を引き起こすでしょう。

さて、CEN名誉会長でもある山本良一先生が気候のティッピングポイント(気候転換点)について講演するイベントをご案内します。

名称: セミナー「未来につながるサステナブル社会」
日時: 2023年9月29日(金)15:00~17:00
会場: おおさかATCグリーンエコプラザ(大阪市)/オンライン
主催: 大阪グリーン購入ネットワーク
参加費: 無料

主な内容:下記HPより抜粋 

「気候転換点を超える前にサステナブルな社会への転換点を超えよう」
山本 良一 氏 東京大学名誉教授

「サプライチェーンのカーボンニュートラル達成に向けて
 ~サプライチェーンにおけるCO2の“チャレンジ・ゼロ”~」
祖父江 伊吹 氏 大和ハウス工業

「カゴメの生物多様性の取組み」
綿田圭一 氏 カゴメ株式会社

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