GPはいいが GPGPはまずい

「GP」といえば、グランプリ(Grand Prix)。F1グランプリとかカンヌ映画祭のグランプリとか、何か優れたものを連想しますよね。しかしこれが「GPGP」になると、まるで違うものを指していることを知りました。

Great Pacific Garbage Patch。グレート・パシフィック・ガーベッジ・パッチ、つまり太平洋に浮かぶ巨大なごみのパッチということで、日本語では「太平洋ごみベルト」と呼ばれるものです。

1988年にはNOAA(アメリカ海洋大気庁)によってその存在が予測され、現在ではハワイとアメリカ西海岸との中間の広大な海域に広がっていることが観測によっても分かっています。その広さは、フランスの3倍に匹敵するとも言われています。こうなるともう、めまいがしそうです。

こちらに地図があります。
*2018年の論文「Evidence that the Great Pacific Garbage Patch is rapidly accumulating plastic」(GPGPが急速にプラスチックを蓄積している証拠)より (CC BY 4.0 DEED)
*赤い所ほどプラスチックごみの密度が高い

風と海流の作用によって、日本を含む東アジアや北米のプラスチックごみがここに集まってきます。海に流れ込んだプラスチックごみは、海洋生態系に大きな悪影響を与えているため、世界中で関心が高まっています。

そんな中、昨年4月に発表された研究結果によると、プラスチックごみに付着した多様な生物が、アジアからこの海域への長期間の漂流を生き延びてきたばかりか、繁殖すらしているということが分かりました。

nature: Extent and reproduction of coastal species on plastic debris in the North Pacific Subtropical Gyre (北太平洋亜熱帯旋廻における、プラスチックごみ上の沿岸種の範囲と繁殖)

この漂流するごみの”いかだ”の表面で、生まれ、育ち、繁殖するというサイクルが行われている。つまり、新たな生態系が生まれているわけです。

自然とは、こんなにも強靭なのか、と改めて驚いてしまいますね。しかし、こうした生物は、この海域に生息していた生物から見たら、遠くからやってきた外来種です。この海域の生態系にどんな影響を与えるのか、まだまだ不明です。新たな発見が、また新たな視点を生むのでしょうね。興味深いです。

さて、環境省の主催で海洋プラスチックごみに関するシンポジウムが開催されるので、ご案内します。

名称: 令和5年度海洋プラスチックごみ問題に関する2つのシンポジウム
日時: (対象:研究者など)2024年3月9日(土)9:00~16:30 
    (対象:一般の方) 2024年3月19日(火)9:00~12:00
会場: 3/9はオンライン/ 3/19は秋葉原UDXシアター(東京都千代田区)  
主催: 環境省
参加費: 無料

主な内容:下記HPより一般向けシンポジウム(3/19)のプログラムのみ抜粋しています。

○ 環境省挨拶
○ 国際条約交渉について
○ テーマ1:動態把握と予測
  講演:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所 教授)
○ テーマ2:発生源・流出経路
  講演:藤原 拓(京都大学大学院 教授)
○ テーマ3:生物・生態系影響
  講演:山本 裕史(国立研究開発法人国立環境研究所 副領域長)
○ テーマ4:代替素材やリサイクルシステム
  講演:吉岡 敏明(東北大学大学院 教授)

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