”舐めるブロック”で牛のゲップによるメタンガスの排出量を削減する試みが行われています。オーストラリアのスタートアップ企業「アグコーテック」(AgCoTech)が開発したエミッション・コントロール・ブロック(Emission Control Block)には岩塩やレモングラスなど独自成分が配合されていて、これを牛が舐めると胃腸の中の細菌バランスが変化し、メタンガスの発生を最大40%削減することができます。また、栄養価が高いため、ミルクの生産量が30%増えます。
すでにラオスの農村に配布されていて、手軽に導入できて温暖化抑制にも貢献できるし、生産量も上がることから、現地ではとても高い評価を得ています。アグコーテックのサイトで実際の村の様子や、牛がブロックを舐めている様子も見られます。
“Laos farmer benefits”(AgCoTech, 2022年6月30日)
村の人にとっては「難しいことは一切抜き!これを舐めさせるだけでいいんですよ」というのはありがたいですよね。
アグコーテックはこの活動にカーボンクレジットを結びつけているため、ブロックを無料でラオスの農村に配布できるようになっています。しかも、牛はこのブロックがたいそう気に入っているようで、夜に牛たちを囲いに戻すのがとても楽になったそうです。そして、牛が近隣の穀物畑を荒らしたり、牧草を食べ過ぎたりするのを抑制する効果もあるとのこと。村の人々にとっては労力的にも経済的にも負担がかからず、牛は健康になって温室効果ガスも削減できて、収入も上がりますから、素晴らしい取り組みですね。
温暖化ガスの削減だけでなく、人々の暮らしの向上にもつながるような温暖化対策っていいですよね。
さて、世界人権問題研究センター事務局の主催で「気候変動と人権」をテーマにしたシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: 2025年度人権大学講座 人権問題シンポジウム 「気候変動と人権」の実施
日時: 2025年6月24日(火)13:30~16:30
会場: ひとまち交流館 京都(京都市下京区)
主催: 公益財団法人 世界人権問題研究センター事務局
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
国連総会で 2015年に「持続可能な発展のための2030アジェンダ」決議が採択されたのは、気候変動、生態系多様性の減少など生物圏の変化、成層圏オゾンの減少、海洋の酸性化など、地球システムを維持するための新たなパラダイムの緊急の必要性があるとの「惑星限界(Planetary Boundaries)」の認識に基づいています。
こうした事態に対応するために2013年から始まったのが科学者らのグローバル・ネットワークによる、より持続的な惑星のための革新的共同研究プログラム「未来の地球(Future Earth)」であり、地球の社会・経済・環境における持続可能性を考えるのが国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」 です。
海洋は大気中の熱及び二酸化炭素の吸収能力が大きく、人間活動に起因する気候変動の緩和に役立ってきました。しかし近年、地球温暖化による海面上昇に加え、海洋生態系は酸性化、貧酸素化の進行により危機的状況に陥っています。温暖化は大気のみならず海洋にも生じています。
2024年4月、欧州人権裁判所は、「気候変動による深刻な悪影響から効果的に保護される権利」を個人の権利として認め、気候変動による影響は、欧州人権条約第8条(個人の生活および家庭生活の尊重)の侵害であると認定しました。
2025年の人権シンポジウムでは、こうした地球温暖化のメカニズムを知るとともに、気候変動の文脈で人権が重要なテーマとなってきている現状について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
パネリスト:
・山形 俊男 国立研究開発法人 海洋研究開発機構アプリケーションラボ特任上席研究員 東京大学名誉教授
・浅岡 美恵 弁護士、気候ネットワーク代表
・坂元 茂樹 世界人権問題研究センター理事長 神戸大学名誉教授
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