英国、国家緊急ブリーフィング(National Emergency Briefing)の結果
山本良一(東京大学名誉教授、CEN名誉会長)
・日時:2025年11月27日9:00~12:00
・場所:ロンドン、ウェストンスター・セントラルホール
・一流の専門家10名が、招待客のみの聴衆1250名、政治家、ビジネス、文化、信仰、スポーツ、メディアのリーダーに対して健康、食料、国家安全保障、経済に関して気候と自然の非常事態の影響と、その科学に基づく解決策を説明した。
・国会議員81名と貴族院議員52名が参加登録。科学者やその他の専門家は、英国が戦時と同等の規模の緊急対応を講じる必要がある理由を説明した。
・緊急ブリーフィングのテレビ放映をスターマー首相やテレビ各局に求める公開書簡を発表。
・45分のドキュメンタリーが制作中で来春初旬の公開を予定
National Emergency Briefing 公式サイト:https://www.nebriefing.org/
◇関連記事の要約
【気候変動対策がなければ英国の安全保障、食料、経済は危険にさらされると専門家が指摘】
UK Security, Food And Economy At Risk Without Climate Action, Experts say
Forbes , Claire Poole, 2025年11月28日
・緊急かつ抜本的な行動のみが、経済、食料供給、そして国家安全保障に影響を及ぼすシステムの 崩壊を防ぐことができる。国家緊急ブリーフィングの明確なメッセージ。
・気候変動と生物多様性の崩壊によって、急速に不安定化する世界において、英国の経済、安全保障、そして統治の基盤はもはや意味をなさない。今こそ理想主義に頼る時ではなく、即時の行動とリスク管理が求められる時である。
[漸進主義の時代は終わった]
気候変動と自然災害という緊急事態を国家危機と同等の重大さで扱うべきである。第二次大戦並みのリーダーシップが必要。
[国家安全保障上の脅威の新たな時代が到来]
複数の危機が連鎖的に発生している。英国は産業革命以降、生物多様性の50%を失った。自然は極めて重要な国家インフラ。
[テクノロジーはガバナンスの失敗から私たちを救えない]
CCSは数十年にわたる投資にもかかわらず化石燃料由来の年間CO2排出量の0.03%しか貯留できていない。遅延技術とタイムリー技術を区別する。
[食料は国家安定の脆弱な基盤である]
【科学者らは英国経済と安全保障に対する深刻な気候関連リスクを警告】
Scientists warn of severe climate-related risks to UK economy and security
The Guardian, Damien Gayle and Fiona Harvey, 2025年11月27日
・専門家らはウェストミンスターで「初の国家緊急ブリーフィング」を行い必要な改革の規模を示した。
・1,000人を超える企業幹部、上級公務員、自治体指導者らが11月27日木曜日午前にウェストミンスターのメソジスト教会中央ホールに集まった。
[ケビン・アンダーソン教授]
「現代社会の根本的かつ迅速で公正な脱炭素化と組織化された技術社会革命を選ぶか、それとも気温上昇の中でとレリックと遅延を続けるか。後者を選ぶと、混沌と暴力を伴う革命的変化が起こるだろう」
[ナタリー・セドン教授]
「気候が変化しているだけではなく、気候を守る生態系が崩壊しているため、私たちは国家的な緊急事態に直面している」
【2025年11月28日報告:COP30の’苛立たしい’結末:アジアの洪水、英国の’緊急’気候イベント】
Debriefed 28 November 2025: COP30’s ‘frustrating’ end: Asia floods; UK ’emergency’ climate event,
Carbon Brief ,Orla Dwyer,2025年11月28日
英国国家緊急ブリーフィング参加者の発言ポイント。
[クリス・パックム(アナウンサー)]
「誤った情報と嘘の危険な波」が押し寄せる中で気候変動について「科学に耳を傾ける」よう求めた。
[マイク・バーナーズ=リー教授(ランカスター大学)]
第二次世界大戦レベルのリーダーシップが必要。
[ケビン・アンダーソン教授(マンチェスター大学)]
化石燃料を排除しなければ、気温は上がり続けるばかりだ。マーシャルプランなみの計画立案を促す。
[ナタリー・セドン教授(オックスフォード大学)]
自然は国家にとって不可欠なインフラ/自然重視経済の実現。
[ポール・ベーレンス教授(オックスフォード大学)]
気候変動による食料安全保障リスクを考慮すべき。英国の農地の85%を占める畜産業の持続不可能な土地利用。
[ティム・レントン教授(エクセター大学)]
気候転換点が突破されつつある。AMOCが停止するとロンドンの冬の気温は氷点下20℃くらいになる。
[ヘイリー・ファウラー教授(ニューカッスル大学)]
イングランドの住宅の4軒に1軒が2050年までに洪水の危険にさらされる可能性。
[アンジェラ・フランシス(WWF-UK)]
ネットゼロ達成コストは年間40億ポンドでGDPの0.2%未満。
[リチャード・ヌジー中将]
気候変動は国家安全保障リスクを増幅させる要因。
[テッサ・カーン(環境弁護士)]
エネルギーコストの上昇は政治的リスクになる。太陽光、風力は永遠に無料。
[ヒュー・モンゴメリー教授(ロンドン大学)]
気候緊急事態は健康上の緊急事態。肉の摂取量を減らす。公共交通機関利用。
【DAUK(イギリス医師会)は国家緊急説明会の要請を支持】
DAUK backs calls for national emergency climate briefing
Doctors’ Associaton UK, Andy Mann, 2025年11月27日
・DAUKは、首相とメディア幹部に対し、深刻化する気候と自然の危機に関する全国的な緊急ブリーフィングを、テレビで実施するよう求める公開書簡に署名した。
・気候危機がもたらす脅威を人々に十分に認識してもらうために、公共メッセージキャンペーンが必要である。これはウェストミンスターで行われた国家緊急ブリーフィングに続くものである。
・DAUKの持続可能性リーダーはマット・リー博士。リー博士はOur Health, Our Planetの原動力である。気候変動への取り組みは、政府にとって健康に関する最優先事項でなければならない。
◇National Emergency Briefing 参加者からキア・スターマー首相と公共放送局に宛てた公開書簡
https://www.nebriefing.org/open-letter-keir
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2025年11月27日
Sir Keir Starmer; Tim Davie (BBC); Carolyn McCall (ITV); Jonathan Allan (Channel4);
Sarah Rose (Channel5); Geraint Evans (S4C); and Dame Melanie Dawes (Ofcom)
今日、数百人の国会議員、貴族、ビジネス、信仰、スポーツ、文化界のリーダーが国家緊急ブリーフィングのためにウェストミンスターに集まりました。
英国は深刻な社会的影響の連鎖に早急に備えなければならないことを示す最新の証拠が提示されました。
化石燃料に資金提供された偽情報がウェストミンスターとメディアに氾濫していることに、私たちは深く憂慮しています。
2003年の通信法に基づき、すべての公共放送局は主要な国内および国際問題について国民に情報を提供しなければなりません。英国はこれまでこの義務を果たしていません。気候変動委員会も政府に対し、信頼できる公共情報を提供するよう強く求めています。
したがって、私たちは政府とすべての公共放送局に対して、国民に向けて緊急のテレビによる全国的な緊急事態説明会を開催し、この危機が自身と家族にもたらす深刻なリスクをすべての人が理解できるよう包括的な国民参加キャンペーンを実施するよう要請します。
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