南極の氷床融解について、最近目にしたのが国立極地研究所の報告でした。9000年前の南極では、大規模な棚氷が一気に崩れ、それが別の地域での氷床融解を引き起こすティッピング・カスケードという連鎖反応につながっていた可能性があるというものです。
南極氷床の融解がさらなる融解を呼ぶ
ー9000年前に起きた南極氷床大規模融解の原因解析から、将来、南極で起こりうる連鎖的氷床融解を提唱ー(国立極地研究所、2025年11月7日)
”海洋深層水”と聞くとつい”美容と健康に良い”という、のどかな連想をしてしまうんですが、これが棚氷を崩壊させてこの氷床融解の連鎖反応のきっかけをつくったということなので、認識を改めなければなりません。
ところが、この記事でむむむ〜と思っているうちに、さらに衝撃的な記事を見つけてしまいました。極地研究所の記事の数日前のものなんですが、南極のヘクトリア氷河の急速な後退についてコロラド大学が発表したものです。その変化は異例でした。わずか2か月で約8キロ後退したという記録は、現代観測史上もっとも速い後退のひとつとされています。
Antarctic glacier retreated faster than any other in modern history
Unprecedented speed of retreat is similar to dramatic glacier retreats that occurred at the end of the last ice age(南極の氷河が近代史上最も速いペースで後退 この前例のない後退速度は、最終氷河期末期に発生した劇的な氷河後退に匹敵する、コロラド大学、2025年11月3日)
この急激な後退を引き起こしたと考えられているのが、氷河の下で氷が海底から浮き上がる「浮力による不安定化」です。この記事中に説明動画がありますが、氷が底を離れた瞬間に海水が氷の下へと入り込み、氷を浮かせる力が働き、後退が一気に加速してしまいます。しかもこの”浮力の罠”は、ヘクトリア氷河だけに特有のものではなく、南極の他の巨大氷河でも同様の地形が確認されつつあります。つまり、この小さな氷河で観測された急変が、大規模氷河で再現される可能性があるということです。
この研究発表をめぐっては、氷床線(氷床が融解する限界点)の位置について意見が分かれて議論されているようなので、そのあたりは考慮しないといけませんが、極地研の研究では「過去に連鎖的な氷床崩壊が実際に起きた」ことが示され、そして、ヘクトリア氷河のケースは「現代の南極でも急激な後退がすでに起こっているかもしれない」ことを教えてくれます。
さて、国際緑化推進センターの主催で、COP30に関する報告会が開催されるのでご案内します。
名称: フォレストカーボンセミナー:COP30等報告会
日時: 2025年12月23日(火)10:00〜12:30
会場: オンライン
主催: 公益財団法人 国際緑化推進センター
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
○ 主催者開会挨拶
沢田治雄(国際緑化推進センター理事長)
○ 報告1「COP30における森林関連分野の動向」
藤本泰樹氏(林野庁 森林利用課 環境保全専門官)
○ 報告2「COP30における森林関係のイニシアチブ等の動向」
岡林正人氏(林野庁 海外林業協力室 課長補佐)
○ 報告3「COP30におけるサイドイベントの開催等について」
宮本和樹氏(森林総合研究所 生物多様性・気候変動研究拠点 拠点長)*予定
○ 報告4「COP30におけるJICA自然環境保全分野イベントの報告」
阪口法明氏(JICA地球環境部国際協力専門員)
○ 共催者閉会挨拶
三村一郎氏(森から世界を変えるプラットフォーム事務局共同代表/JICA地球環境部次長)
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