国連世界気象機関(WMO)が2020年に「北半球の観測史上最低気温」を発表しました。その記録が観測されたのはずっと遡った1991年12月22日で、場所はグリーンランドにある氷床の頂上、高度3,100mの地点です。北半球では一番寒い場所ですが、このところかなりアツくなっています。
グリーンランドの歴史をたどっていくと、人類最初の居住の痕跡は紀元前2500年ごろから紀元前800年ごろまで南部で栄えた「サカク文化」(Saqquaq culture)にまで遡れます。パレオ・エスキモー(古代エスキモー)と呼ばれる人たちで、現在のイヌイットの祖先であるトゥーレ人よりも前にグリーンランドや北極圏に住んでいた人々です。
同時期に北部で栄えたインディペンデンス文化、サカク文化の後に栄えたドーセット文化、トゥーレ文化もグリーンランドの歴史に名を刻んでいます。
ヨーロッパ人として初めてバイキング(ノルマン人)がグリーンランドへ到達して定住したのは 10世紀末のことで、アイスランドを拠点とした航海文化と豊かな航海技術が大きな背景でした。彼らのロングシップ(長船)は強風や波にも耐えうる設計で、北大西洋の島々を段階的に探索・移住することが可能でした。また、人口増加に伴う土地不足や不作、飢饉などが、新しい土地へ移住する圧力になったとも考えられています。
気候面では、中世温暖期(約950~1250年) が北大西洋地域に存在したことがノルマン人の移住のきっかけになり、またその後小氷期に入ったことが衰退の原因だったとされたこともありますが、近年の研究では気候変動要因のみによる説明には疑問が呈されています。氷河堆積物の分析結果から、(ヨーロッパなどの一部地域で温暖だった)中世温暖期でもグリーンランドでは寒冷な気候が続いた可能性があり、気候の影響は一様ではなかったとする見方もあります。ノルマン人によるグリーンランドでの植民地は15世紀半ばには消滅しますが、その原因として、主な交易品であったセイウチの牙の価値の低下によって経済的動機が失われたことや現地イヌイットとの衝突があった可能性も考えられています。
グリーンランドは世界最大の島。面積は217万平方kmで、日本の国土の約6倍ですが、人口は6万人にも達しません。主な産業は漁業と海産物加工業です。近年、温暖化で氷床が減少しているため、豊かな地下資源の採掘の可能性も注目されていますし、北極海の海氷の減少により北西航路と北極海航路が活用され始めています。また、防衛研究所の報告(NIDSコメンタリー第205号, 2022年)によると、グリーンランド(G)・アイスランド(I)・イギリス(UK)の間にある”GIUKギャップ”と呼ばれるシーレーンの重要性が見直される中、この海域でのロシアの潜水艦の活動は冷戦時代の水準かそれ以上と見られているそうです。
気候の変化だけが原因ではありませんが、気候変動も作用してこの地域に大きな変化を起こしつつあるんだな、と感じます。穏やかな暮らしを営んできたグリーンランドの人々が国際情勢の荒波に放り込まれているような形になっていますが、なんとか乗り切ってもらいたいですね…。
さて、環境省などの主催でIPCCに関連したシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: IPCCシンポジウム 「直面する気候変動に対処するための様々な道筋を考える」
日時: 2026年1月30日(金)14:30~17:30
会場: 東京国際フォーラム(千代田区)/オンライン
主催: 環境省、文部科学省、経済産業省、気象庁
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋 (日英同時通訳あり)
○ 開会挨拶
環境副大臣 青山 繁晴
○ 基調講演
(1)Ladislaus Chang’a IPCC AR7 副議長、タンザニア気象庁長官代理
「IPCCと気候変動における科学の役割」
(2)Bart van den Hurk IPCC AR7 WG2共同議長、アムステルダム自由大学教授
「(仮)グローバルな適応対策」(ビデオ)
(3)Joy Jacqueline Pereira IPCC AR7 WG3共同議長、マレーシア国民大学教授
「(仮)グローバルな緩和対策」(ビデオ)
○ 講演
(1)井田 寛子 気象キャスターネットワーク 理事長
「(仮)日本の気候変動2025について」
(2)肱岡 靖明 国立環境研究所 気候変動適応センター センター長
「(仮)最新の気候変動影響評価報告書について」
(3)黒田 康平 株式会社イミュー 代表取締役
「環境変化に適用する地域連携「極寒ぶりプロジェクト」」
(4)志知 和明 大阪府 環境農林水産部 環境管理室環境保全課 課長補佐
「(仮)地域に根差した緩和実践例」
(5)和田 優希 Climate Youth Japan
「ユースが見る気候変動問題とその関わり方」
○ ディスカッション:次世代の参加者が今後自ら実践できる取組や自分が
将来進む道筋などについて
○ 閉会
詳しくはこちらをご覧ください。
