気候非常事態ネットワーク、東京大学名誉教授 山本良一
人為起源の温室効果ガスの大量放出による地球温暖化は既に人類や自然にとって甚大な災害をもたらしている。ドイツのハンス・シェルンフーバー教授はこれを人類の焼身自殺 (Selbst Verbrennung) と呼び、「相互確証破壊」に代わって国際協調による温室効果ガスの削減、「相互確証脱炭素化」を推進しなければならないと説いた。この「相互確証脱炭素化」がパリ協定であり2℃目標(できれば1.5℃目標)である。
2026年3月6日に公表されたフォスターとラームストルフの論文によれば、地球温暖化は加速しており、今や10年間あたり世界の年間平均気温の上昇は0.35℃に達し、10年前より2倍に増加している。彼らは最も広く使用されている世界の5つの気温データセットを使用し、自然変動要因を除去して地球温暖化を評価した。パリ協定の1.5℃目標は5つのデータセットに対して2026年〜2029年の間に突破されてしまうという結果を得た。
2025年6月の第2回グローバル転換点会議では、初めてサンゴ礁枯死の転換点が超えられたと判定された。西南極大陸氷床崩壊、グリーンランド氷床崩壊、アマゾン熱帯雨林の枯死の転換点もあと数十年に迫っていると考えられている。この“気候と自然の非常事態”に直面して、世界の2000を超える国・自治体政府が気候非常事態宣言を発し、ネットゼロ目標を議決した。グリーンニューディールあるいはサステナビリティ・トランスフォーメーションが当面の政治的課題であるのに、全く正反対の政治的動きが顕著になって来た。
第二次トランプ政権は発足以来304件の気候変動関連政策を縮小あるいは撤回し、パリ協定から離脱した。英国のリフォームUKという政党は多数派となった7つの自治体で気候非常事態宣言やネットゼロ目標を撤回した。2月12日のKing’s College Londonの調査によれば英国民のネットゼロに対する切迫感と気候変動政策への支持は急激に低下しているとのことである。人類はこのまま焼身自殺の道を選ぶのか、それともパリ協定(相互確証脱炭素化)の道を選ぶのかの重大な岐路に立っている。
