泡の先輩 コウテイペンギンの危機

昨年1月、面白い貨物船が沖縄・大阪間を結ぶ航路に就航しました。船の名前は「ちゅらさん」。沖縄の言葉で「美しい」とか「清らか」という意味なのですが、実は最新鋭の技術を搭載していて、なんと船底から「泡」を吹き出しながら走る、世界でも珍しい仕組みを持っています。

第二世代の高度空気潤滑法AdAM を適用した1 番船となる内航貨物船「ちゅらさん」が就航〜GHG 排出量を更に減らし、地球温暖化防止に貢献〜 (海上技術安全研究所、2025年2月21日)

この技術は「高度空気潤滑法(AdAM, Advanced Air Lubrication Method)」と呼ばれ、船底を空気の泡で覆うことで、船体と水との間に生じる摩擦を減らします。水の中を走る船にとって、水の抵抗をいかに減らすかは、燃費を良くするための最大の課題です。ちゅらさんに搭載されたシステム「ZERO」は、空気を出しっぱなしにするのではなく、一定のリズムで「周期的に」吹き出すことで、さらに効率よく抵抗を減らすことに成功しました。その省エネ効果は、実運航のデータで約5%にも達しています。

この技術への挑戦は意外と古くて、19世紀にはすでに船底に「ふいご」で空気を送り込む実験が行われていたそうです。ただ、安定してその効果を発揮する技術を確立することができない状況が続いていました。長年の試行錯誤が身を結んで「ちゅらさん」の就航に繋がったというわけです。

実は、この「泡の力で水の抵抗を減らす」という知恵を、大昔から使っている生き物がいます。南極に住むコウテイペンギンです。彼らは海に潜る際、羽毛の間に蓄えた空気を細かな泡として一気に放出します。この泡が潤滑剤の役割を果たし、驚くほどのスピードで水中を泳ぐことができるのです。

しかし、そのコウテイペンギンはいま、深刻な危機に直面しています。今年4月9日、国際自然保護連合(IUCN)はレッドリストを更新し、コウテイペンギンを新たに「絶滅危惧(Endangered)」に指定しました。これまでは「準絶滅危惧」という、まだ少し余裕があるランクでしたが、一気に危険性が高いランクへと引き上げられたのです。

最大の理由は、彼らの生息地である南極の「定着氷」(海岸や海底に固定されて動かない海氷)が失われていることです。コウテイペンギンは、この氷の上で雛を育て、防水性のない産毛が抜けるのを待ちます。ところが気候変動の影響で、雛が海を泳げるようになる前に氷が崩れてしまう状況が起こっています。このままのペースで地球温暖化が進むと、2080年代までにコウテイペンギンの数は今の半分にまで減ってしまうと予測されています。

泡の力を使って船舶が二酸化炭素の排出を減らすことが、南極の氷を守りコウテイペンギンの未来を繋ぎ止めることにすこしでも繋がるといいですね。”泡使い”の大先輩でもある彼らが、泡をまとって自由自在に泳ぎ続けられる環境であってほしいものです。

さて、気候ネットワークの主催で石炭火力をめぐる世界の状況についてセミナーが開催されるのでご案内します。

名称: 「気候危機と石炭火力Q&A」出版記念セミナー 
    ゲストと語る日本のエネルギーと未来 第3回 石炭火力をめぐる世界の潮流

日時: 2026年4月21日(火)18:30〜19:15 
会場: オンライン 
主催: 気候ネットワーク
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

このセミナーでは、新刊『気候危機と石炭火力Q&A』の出版を記念して、ジャーナ
リストや研究者など、多彩なゲストをお迎えして、日本のエネルギー政策のこれから
について、ライブ対話で掘り下げていきます。本をお持ちの方はもちろん、本を
お持ちでない方もお聞きいただける内容になっておりますので、ご関心のある方は
どなたでもご参加いただけます。

クロストーク
田村 堅太郎さん(IGES・リサーチディレクター)
桃井 貴子(気候ネットワーク)
聞き手:櫻田 彩子(エコアナウンサー/気候ネットワーク 理事)

詳しくはこちらをご覧ください。