バイオロギング 動物の力を借りて環境調査

切り立つ崖に暮らすヤギは、ほとんど垂直の崖の途中なのに、わずかに出ている足場を見つけて走り回るだけでなく、時には下に向かってぴょんぴょん飛び降りて行きます。そんなヤギにカメラを取り付けて、ヤギの視点から彼らの行動を捉えた映像を見たことがあります。こっちは茶の間で映像を見ているだけなんですが、下に向かってすっ飛ぶように降りていったときには「おいおい、大丈夫かよ!」とヒヤヒヤしてしまいました。やはり視点が変わると、認識も変わるし、そこで初めて分かることもありますよね。

野生生物に小型の発信機やビデオカメラを装着してその行動や生理状態、生息環境の様子を記録することをバイオロギング(bio-logging)といい、陸海空のさまざまな生物の調査やモニタリングに活用されています。海でいうと、アザラシ、クジラ、ペンギン、ウミガメ、海鳥、魚などその対象は多様です。日本初の技術で、いまでは世界中の研究者が活用して、生き物たちの知られざる生態が発見され、分析されています。最近ではトンボやハチといった昆虫にも取り付けられる超小型機器もあるというから驚きです。こうして集めた情報は生態系や海洋資源の保護に生かされます。

また面白いのは、動物たちについて調べられるだけでなく、計測機器を装着して動物たちに様々な環境データを計測してもらうこともできるため、気候変動の影響の調査にも応用できるということです。人間では調査が難しいところ、人間では実現が難しい広範囲の調査もできるので、これからますますその重要性は高まっていきそうです。なかなかすごい話ですね。

さて、文部科学省が昨年10月31日に開催した「海洋生物ビッグデータ活用技術高度化」に関する公開シンポジウムの動画が公開されましたので、ご案内します。
バイオロギングの話も出てきます。

開催日:2025年10月31日
名称: 海洋生物ビッグデータ活用技術高度化 公開シンポジウム
主催: 文部科学省

主な内容:

冒頭挨拶   
文部科学省研究開発局 海洋地球課長 三宅 隆悟

開会挨拶
ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)議長 道田 豊

講演1「国連海洋科学の10年に関する研究動向について」
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)/ 研究開発戦略センター(CRDS)
環境・エネルギーユニットフェロー 幡野 尚宏

講演2-1「海の豊かさを可視化するデータテクノロジーと海洋空間計画の有望性」
琉球大学 理学部 教授  久保田 康裕

講演2-2 ”Balancing profitability, biodiversity and societal needs in the design of offshore windfarms”
フィンランド環境研究所、ヘルシンキ大学  Elina Virtanen

講演3-1 「イベントベースビジョンセンサー(EVS)を用いた海洋粒子ビッグデータ生成」
ソニーコンピュータサイエンス研究所 高塚 進

講演3-2 ”Biogeochemical-Argo, Exploring Global Ocean Chemistry and Biology in 
Real-Time with Robots and Sensors”  
モントレー湾水族館研究所 Ken Johnson

講演4-1 「バイオロギングで実現する海洋生物と人の持続可能な共生社会」
東京大学 大気海洋研究所 教授  佐藤 克文

講演4-2 ”The Internet of Animals”
マックスプランク動物行動研究所 Martin Wikelski

パネルディスカッション
「講演を受けた海洋生物ビッグデータ活用の今後の方向性について」
〇モデレーター: 早稲田大学 赤松 友成(本事業プログラムディレクター)
〇パネリスト : Elina Virtanen / Ken Johnson / Martin Wikelski /道田 豊 /三宅 隆悟

閉会挨拶  早稲田大学 赤松 友成

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