結局380度なのか 180度にできるのか

1974年から75年にかけてボクシングのWBC世界ライト級王者として5度の防衛を果たしたガッツ石松氏の名言の一つに「私はボクシングと出会って、人生が380度変わった」があります。「180度」を言い間違えただけのようですが、逆境を乗り越えて偉業を成し遂げた人の言葉だと思うと、勝手に深みを覚えてしまいます。

AIは、その進歩のおかげで研究開発の効率が急速に向上し、私たちの生活を豊かにしてくれる一方で、大量のエネルギーと水を消費するため、データセンターの建設反対運動が起こったり、最近は「AIが数年以内に人類を滅ぼす可能性がある」という脅威説が大きな話題になったりしています。

水の消費について、OpenAIのCEOサム・アルトマン氏がSources Podcastという番組の中で語った言葉があります。
「ChatGPTのクエリ約38,000回につき、カリフォルニア州でアーモンド1粒を生産するのと同量の水が使われています」
「一度にアーモンドを12粒も食べるような人々は、大部分において、水の観点から何かひどいことをしているとは感じていないでしょう」
「確かに、かつてデータセンターは気化熱冷却を利用していました。しかし、もう随分と前からそうではありません。現代の非常に巨大なデータセンターを見れば、その水消費量はオフィスビルがシンクやトイレなどで使う水と同程度です」
(”Sam Altman on Astra, AGI, and the future of OpenAI”, Sources Podcast, 2026年9月2日)

アーモンドと比較するのはちょっと面白い視点だなぁと感心してしまったのですが、この対比については、嘘ではないにしても都合の良い情報を取り出したもので、結論としてはほとんど誤りだ、という批判もあります。(”Sam Altman says one almond uses as much water as 38,000 ChatGPT queries. Not quite.”, Poynter, 2026年9月15日)

ところで、データセンターと水に関して、これとは違う観点からの報告書を見かけました。8月25日に、アメリカのボストンに拠点を置き持続可能な経済活動の推進を目指すCeresという非営利団体が発表したものです。

Water Behind the Watts: The Hidden Risk of Powering Data Centers(ワットの裏に潜む水:データセンターの電力供給における隠れたリスク)(Ceres, 2026年8月25日)

データセンターと水の利用について語る時に、施設内の機器を冷却するための水に目が行きがちですが、この報告書ではデータセンターで必要な電力を発電するために必要な水量と、その電力がどれほど水に依存しているのかに注目しています。アメリカのデータセンターの約半数が存在する7つの州(3,907か所の発電所)を対象にしています。

2024年の状況ですが、データセンターで使われている電力の78%が水を使う発電所(ガス、石炭、原子力、地熱、バイオマス、石油を使う発電所)から供給されていて、その電力の発電に使われている淡水は年間3兆4,000億ガロン(約12兆8,700億リットル)です。12兆リットル、と聞いても全くピンと来ませんが、琵琶湖の貯水量が約27兆5,000億リットルといわれているので、琵琶湖の半分くらいの水と考えればいいですね。

そして、これらの発電所は、水不足や干ばつのリスクに直面している地域にあり、水を使っている発電所の3分の2が中程度から極めて高い水不足にさらされている、とされています。

発電所のほとんどがデータセンターによる電力需要には注目しているが、(水不足や枯渇などの)潜在的な水リスクを考慮していない、という状況なのだそうです。水をどう管理し、確保していくのか。水を使わない発電(太陽光、風力)の割合を高めていけるか。こうした点に向き合う必要があるようです。

AIやロボットなど様々な技術が発達しても、テクノロジーへの依存度が高まり、干ばつが原因で電力供給が不安定になって日常生活が危機にさらされてしまう、などという脆弱な社会では、結局のところ進歩しているのかなんなのか。私たちの社会のありようも「ぐるっとひと回りして、結局変わったのは20度かよ」ではなく、ガッツポーズをしながら「180度変わりました!」と言えるくらい強靭なものにしていきたいですね。

さて、リクロマ株式会社の主催でGAP分析やロードマップに関するセミナーが開催されるのでご案内します。

名称: 気候変動・サステナ対応、今押さえておきたい3つのポイント
日時: 2026年9月28日(月)14:00~15:00 
会場: オンライン 
主催: リクロマ株式会社
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

開示担当部門が「何から着手すべきか」を明確にできないまま時間が過ぎているケースは少なくありません。開示義務の発効とそれを支えるデータ収集・内部統制の整備には1~2年のタイムラグがあるため、2026年10月~2027年9月は着手の最終ラインにあたります。本セミナーではGAP分析・ロードマップ作成、複数評価機関への対応優先順位づけ、適応計画という3つの実務テーマについて着手すべき理由を解説します。

リクロマ株式会社 大津 拓也
・GAP分析・ロードマップ作成
・評価機関横ぐしでの優先順位付け
・適応計画

詳しくはこちらをご覧ください。