タイトルを読んだだけではすぐにはピンと来ませんでしたが、読み進めていくうちに「これは海の生態系の基盤がどう変化するのかを予測する」ということで、こりゃすごい、そして面白い話だなと思いました。
植物プランクトン量の半年先予測に成功 -海洋低次生態系の準リアルタイム季節予測の配信を世界で初めて開始-(2026年8月27日、JAMSTEC)
まずこの研究が特別である点を二つ言うと、こうです。
○「物理」から「生物」へ
これまでの気候モデルや季節予測(エルニーニョ現象の予測など)は、あくまで気温・海水温・海流という物理的な変数を予測するのが主流でした。今回は、そこに複雑な生態系を計算する「海洋低次生態系モデル」を結合させ、植物プランクトンの動きをシミュレーションすることに成功しました。
○ 「数カ月先」という長期の生物予測
天気や海の物理状態と違い、生き物や生態系は環境の変化を受けて複雑に反応するため、半年という長期の先行きを高精度で予測することは極めて困難とされてきました。それを世界で初めて準リアルタイムで配信できるようになりました。
そして、興味深いところを三つ。
○ エルニーニョ現象をトリガーにして連鎖を解く
エルニーニョ現象に伴う海水温や海流の大規模な移動が、植物プランクトンの増減の大きな引き金になるので、エルニーニョ現象を予測することが植物プランクトン量の予測に重要です。
○ 食物連鎖の土台の変化が見える
植物プランクトンは動物プランクトンの餌となり、最終的には私たちが口にする魚などの水産資源へと続く、すべての食物連鎖の土台を支えています。その動きを半年前から予測できることは大きな意味を持ちます。例えば、エルニーニョが発生すると、海流のシフトやプランクトンの激減によって、特定の島嶼国などで「いつもの漁場で魚が全く獲れなくなる」といった深刻な打撃を受けます。プランクトンが激減することが半年前に分かっていれば、漁業管理や食料供給計画を事前に調整し、経済的・社会的なダメージを最小限に抑えることができます。
○ 「海洋デジタルツイン」への貢献
現実の海洋環境や生態系をそのままデジタル空間に再現し、未来の予測やシミュレーションを行おうという最先端の構想「海洋デジタルツイン」。今回の研究のように、物理現象(水温や海流)だけでなく生物の動きまで取り入れた予測システムは、この海洋デジタルツインを実現するうえで極めて重要な基盤となります。
これは海洋生態系の保護・保全、持続可能な漁業の推進、気候変動による漁業への被害の軽減などに大いに活躍しそうですね。
さて、自然エネルギー財団の主催でエネルギー危機と気候危機に関するシンポジウムが開催されるのでご案内します。
名称: シンポジウム エネルギー危機・気候危機への日本の選択
日時: 2026年10月29日(木)15:00~17:30
会場: 虎ノ門ヒルズフォーラム/オンライン
主催: 公益財団法人 自然エネルギー財団
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
○ 開会あいさつとテーマ設定
大野 輝之 自然エネルギー財団 常務理事
○ 講演
「二つの危機を共に解決するEUの戦略」
トーマス・コーベリエル チャルマース工科大学 教授/
自然エネルギー財団 シニアポリシーアドバイザー
「エネルギー需給構造をどう強靭化するか」
橘川 武郎 国際大学 学長
「経済安全保障に寄与する自然エネルギーの導入拡大」
高橋 洋 法政大学 教授
○ 徹底討論
「エネルギー危機・気候危機への日本の選択を問う」
[モデレーター]安藤 淳 日本経済新聞 編集委員
・トーマス・コーベリエル チャルマース工科大学/自然エネルギー財団
・橘川 武郎 国際大学
・高橋 洋 法政大学
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