遠心力の凄さ ロケットもぶん投げる

旧約聖書の「サムエル記上」第17章に、ペリシテの巨人兵士ゴリアテとイスラエルの羊飼い、ダビデ少年の戦いについて書かれています。

イスラエル軍に対して一騎討ちを提案し、挑発を繰り返すゴリアテ。ゴリアテを恐れるイスラエル軍兵士たち。40日間もそれが続いた頃、羊飼いのダビデはこれを聞き、ゴリアテと戦うことを決意。剣も鎧も身につけず、杖と投石器といくつかの小石だけを持って、ゴリアテに対峙する。ゴリアテが向かってきたところに、ダビデは投石器で石を投げつける。石がゴリアテの額にのめり込み、ゴリアテは倒れた。

人類最古の武器の一つでもある投石器ですが、遠心力を利用すると、小さな力でも大きな威力を生み出せる一つの例ですね。

カリフォルニアのビール会社、シエラネヴァダ醸造会社(Sierra Nevada Brewing Company)が2021年3月に世界記録を打ち立てました。新しいインディア・ペールエール(ビールの一種)”ビッグ・リトル・シング・インペリアルIPA”の発売開始に合わせて、ビール樽を投石機で投げ飛ばすことを企画。見事、
133.75mも飛ばしたのです。

Sierra Nevada Brewing Co.: Big Little Thing Keg Launch (飛ばしている様子)

これが「トレビュシェット(投石機の一種)で重さ20kg以上の物体を飛ばした距離」のギネス世界記録となりました。

コロナ禍で試飲会など人を集めたイベントが開催できない中、遊び心にあふれた豪快なプロモーションです。それにしてもこのあと中のビールはどうなったんだろう、と思っていたら、この会社のブランドマネージャーの言葉が記事にありました。「樽にはビールは少しも入っていない。もったいないよ。ビールは飲むものだからね。あれには水が入っているのさ」とのこと。

さて、同じくカリフォルニアにスピンローンチ(SpinLaunch)という会社があり、こちらもすごいものを「ぶん投げ」ました。荒野に立つ高さ50m以上の丸い建物。側面に円筒がついています。

SpinLaunch: Flight Test #10 – The First Payloads (試験飛行10回目の様子)

これは遠心力を利用して飛行体を空高く打ち出す実験です。巨大な円形部分は真空で、そのなかにアームがあり、その先端部に打ち上げたい飛行体を取り付けます。超高速でアームを回転させた上で飛行体を解放。遠心力により、飛行体は円筒内を時速8,000kmで通過して空高く飛んでいきます。

今回の実験で使われたものとは違うものですが、こちらのCG映像をみるとイメージがはっきりします。

今回はNASA、エアバス、コーネル大学など外部パートナーたちの積荷を乗せた初めての飛行試験でした。

まだ周回軌道に到達させるところまではいきませんが、ゆくゆくはある程度の高度まではこの仕組みで小型ロケットを放り投げて、一定の高度でロケットエンジンを点火し、周回軌道に乗せるというところを目指しています。

これが実現できれば、使用燃料を大きく削減できます。

新商品の発売開始も、物を投げ飛ばすことも、ロケットの打ち上げも英語ではローンチ(launch)と言いますが、それにしてもいろんなアイディアがあって、面白いものですね。