世界のあちこちで極端な豪雨や洪水、熱波、旱魃など、いろいろなことが起きますが、特定の現象について「これは人間活動による気候変動のせいだ」と判断するのは、簡単ではありません。
ある極端な気象について、どの程度が人間活動による気候変動のせいなのかを計算・評価するプロジェクト「世界気象アトリビューション」(World Weather Attribution, WWA)があります。2014年に設立され、インペリアル・カレッジ・ロンドンやオランダ王立気象研究所、気象環境科学研究所、赤十字・赤新月社気候センターなどの専門家が参加しています。
1月7日の発生以来いまだ続いているカリフォルニア州の山火事について、1月28日にWWAが「気候変動が山火事の可能性を高めた」という調査結果を公表しました。
WWA:Climate change increased the likelihood of wildfire disaster in highly exposed
長い記事なのですが、3点だけ拾ってみます。
・火災気象指数
山火事が発生しやすい気象条件を測る指数として「火災気象指数」(Fire Weather Index, FWI)を使っています。過去数週間~数日間の気温や湿度、風速、降水量を織り込んだ指数です。産業革命前と比べて1.3℃温暖化している現在、今回の山火事を引き起こした極端な火災気象指数につながる条件は平均して17年に1回発生すると予想されています。気温が1.3℃低い気候と比較すると、その発生確率は約35%増加していて、火災気象指数の強度も約6%増加していることが分かりました。
・乾季の長さ
地球の気候が1.3℃低かった頃に比べて、乾季の長さが約23日長くなっていることが分かりました。乾燥して燃えやすい草木が多くなっていることを示し、また、サンタアナ風(カリフォルニア州南部で秋から初冬にかけて吹く高温で乾燥した熱風)と重なる期間が長くなります。
・今年の状況
通常、10月から12月にかけて雨が降るため、山火事が起きやすい時期は終わります。しかし、この地域では2024年5月以降、まとまった降雨が見られなかったため、火災が発生したときには草や灌木は乾燥しており、非常に燃えやすくなっていました。さらに、2022/23年と2023/24年の冬に平均以上の降雨があったことで、植物の成長が促進され、火災の燃料が増えていました。
史上最悪レベルとも言われている今回の山火事では、これまでに少なくとも28人が命を落とし、16,000棟以上の建物が破壊されているとのことです。
また、2023年にカナダで発生した大規模な山火事では、NASAの調べによると、インドの1年間の排出量に匹敵する炭素が排出されたそうです。このままでは「大気中の炭素の増加」と「山火事の増加」の悪循環に陥ってしまいそうです…。
さて、大阪府の主催で「気候変動と防災」に関するセミナーが行われるのでご案内します。
名称: 治水の歴史から気候変動時代の防災を考える「気候変動と防災」セミナー
日時: 2025年2月9日(日)13:30~16:00
会場: グランフロント大阪(大阪市北区)
主催: 大阪府
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
【基調講演】「近年の異常気象と気候変動」
井田 寛子 氏(NPO法人気象キャスターネットワーク 理事長)
「江戸時代の開発と治水~堤外地政策を中心に~」
村田 路人 氏(神戸女子大学文学部史学科 教授)
「気候変動と避難スイッチ」
竹之内 健介 氏(香川大学創造工学部 准教授)
「おおさか気候変動適応センターの取組みについて」
おおさか気候変動適応センター
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