「草原」は地球の陸地の約3分の1を占めており、家畜を育てるための基盤という意味で非常に大きな食料生産の仕組みとなっています。しかし気候変動がその基盤を根底から揺るがしているようです。
ドイツのポツダム気候影響研究所(PIK)などの研究チームが発表した最新の報告によると、今世紀末(2100年)までに、家畜を育てるのに適した土地が、世界全体で現在の半分近く(36%~50%)にまで減ってしまう可能性があるというのです。
Climate change could halve areas suitable for cattle, sheep and goat farming by 2100(2100年までに気候変動によって牛、羊、ヤギの飼育に適した地域が半減する可能性がある)(ポツダム気候影響研究所、2026年2月9日)
研究者たちは、ウシたちが健康に育つために必要な環境を「安全な気候スペース(Safe Climatic Space)」と呼んでいます。これまでの長い歴史の中で、家畜の飼育は以下のような特定の条件の中で行われてきました。
・気温: マイナス3℃から29℃の間
・雨量: 年間50ミリから2,627ミリの間
・湿度: 39%から67%
・風速: 秒速1mから6m
これがいわば、家畜たちにとっての「快適な場所」の条件です。しかし、気候変動よって気温が上がりすぎたり、雨が降らなくなったりすることで、この条件から外れてしまう場所が増えています。その結果、世界中で16億頭もの家畜と、それらを育てて生活している1億人以上の人々が、自分たちの居場所を失う危機に直面しています。
特に深刻な影響を受けると予測されているのが、アフリカです。アフリカの草原は、現在でもすでに「安全な気候スペース」の気温上限に近い状態にあります。もしこのまま温室効果ガスの排出が増え続ければ、アフリカの草原の最大65%が失われるという、予測が出ています。半分以上ということですから、これは深刻です。
これまで、アフリカの牧畜を営む人々は、日照りなどの厳しい時期には、飼育する動物の種類を変えたり、群れを連れて別の場所へ移動したりすることで、過酷な自然と共生してきました。しかし、今起こっている変化はあまりにも激しく、そうした伝統的な知恵だけでは対応できないかもしれません。
草原が減ることは、世界的な食肉や乳製品の不足につながり、私たちの食卓にも直接響いてきます。研究チームは、この深刻な事態を食い止めるための最も効果的な方法は、「一刻も早く化石燃料(石油や石炭など)から卒業し、温室効果ガスの排出を減らすこと」だと結論づけています。
ウシやブタ、ヤギ、ヒツジなどの家畜の飼育は1万年くらい前から始まったと言われています。狩猟採集の生活から定住生活への移行、農耕の拡大、安定した食料供給、社会の安定、文明の発展など、家畜の登場により人類の生活は大きく変化しました。家畜に適した土地が半減した時、どんな世界になるのでしょうか…。これはちょっと、想像するのが難しいですね。
さて、2月24日に行われた「空のカーボンニュートラル」シンポジウムvol4のアーカイブ動画が公開されたのでご案内します。
名称: 「空のカーボンニュートラル」シンポジウムvol 4 ~地域と描くSAF(持続可能な航空燃料)と航空脱炭素化の未来図~
日時: 2026年2月24日
主な内容:
開会挨拶(国土交通省航空局 田口航空ネットワーク部長)
<基調講演>
「日本におけるSAFバリューチェーン構築の意義 ~環境価値と地産地消による価値を探る~」
株式会社みずほ銀行 産業調査部 次世代インフラ・サービス室 戦略プロジェクトチーム シニアアナリスト
豊川 晃範 氏
<講演>
【議題1】国産SAFの実用化及びSAFの地産地消に向けた取組
「国産SAF実用化への課題と今後の展望」
コスモ石油マーケティング株式会社 産業燃料部 部長
里園 拓 氏
「国産SAFの普及に向けた供給体制の構築 ~国産SAFの効率的な供給の実現に向けた実証~」
ENEOS株式会社 バイオ燃料部長
今朝丸 研一郎 氏
【議題2】SAFの利用促進に向けた地域連携の取組
「SAFの利用促進と認知拡大に向けた東京都の取組」
東京都 環境局 資源循環推進部 資源循環調整担当課長
山中 敏晃 氏
「自治体と連携した国産SAFサプライチェーン構築の取組」
中部国際空港株式会社 サステナビリティ推進室 室長
重野 尚之 氏
「廃食用油の回収及びSAFの普及に関する取組」
吹田市 環境部環境政策室 主幹
和田 亜由美 氏
【議題3】SAFの環境価値の活用に向けた取組
「Scope3削減と企業価値: 航空輸送の『環境価値』を活かすカーボンインセッティングの重要性」
株式会社NTTデータ コンサルティング事業本部
エンジニアリングチェーンユニット シニアスペシャリスト
政井 佑介 氏
「SAFを活用したScope3削減の取組について」
NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社 執行役員
サステナビリティ推進部担当 兼 サステナビリティ推進部長
岸田 博子氏
