ハルシネーションにご注意 人間も

ChatGPTなどの生成AIに質問すると「事実ではないことをもっともらしく自信満々に語る」ハルシネーションという現象が時々あるから注意しましょう、という話をよく聞きます。2023年に発表されたヨーク大学などの研究によると、AIが生成したテキストの46.4%に事実誤認がみられたそうです。あくまでもこの研究結果の数値ですが、え、言ってることの半分がウソなの?と驚いてしまいますね。

でもよく考えてみると、人間も似たようなところがありますよね。さすがにウソが半分とまではいかないにしても、間違った記憶に基づいて人に話してしまうこともあれば、先入観や早とちりで間違った解釈をしてしまうこともありますよね。気候変動の話に限りませんが、「この報告書にはこう書かれている」「この研究ではこのようなデータが示されている」という話においては正確であることが重要ですよね。そんな中、気象庁が発表したこの力作はなかなか便利です。

3月25日に「日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き」が公表されました。昨年公表された「日本の気候変動2025」の解説本で、内容も一部更新されています。

『日本の気候変動2025を用いた気候変動解説の手引き』を公表しました(気象庁、2026年3月25日)

二つの例を挙げます。

【日本の年平均気温の上昇率は世界平均よりも高い】という項目があります。(p.27)
この中の「・・・長期的に上昇しており、その1898年から2024年までの上昇率は100年あたり1.40℃の割合である」という部分に解説があります。ここは、”率”と”割合”という文字を見落とすと誤解してしまいます。間違った表現例を先に上げると、
 (誤)「100年で○℃上昇」
 (誤)「2024年までの100年で○℃上昇」
 (誤)「100年前と比べて○℃上昇」
正しい表現例としては、
 (正)「100年当たり○℃の上昇」
となっています。

正誤の理由をまとめると、
・特定の100年間の上昇量が○℃、ということではないから
・1898~2024年(127年間)で計算した結果を“100年当たり”の上昇量で示しているから
・特定の年に対する上昇量ではないから
・”100年当たり~℃の上昇”とするとき、”割合で”という言葉は省略できるから
ということです。

うっかり「この100年で1.4℃上がっているんです」と言ってしまいそうですよね。解説を読むと、なるほど、と思います。

もう一つ、【日本国内の極端な大雨の発生頻度や強度は増加している】という項目があります。(p.36)
ここでは”大雨”と”線状降水帯と”災害”を分けて考えなければなりません。間違った表現例を先に上げると、
 (誤)「日本では大雨の発生頻度が増加しているため、災害につながる雨の発生頻度も増加している」
 (誤)「日本では線状降水帯の発生頻度が増加している」
正しい表現例は、
 (正)「日本では大雨の発生頻度が増加しており、災害のリスクが高まっている可能性がある」

ポイントとしては、大雨が災害につながるかどうかはその地域の地形・地質・インフラの状況によって異なるということ。この報告書には、大雨の頻度の増加を示すデータはありますが、それが直接的に災害の増加を意味するわけではないんですね。でも、だからと言って関係ないということではなくて、「災害のリスクの高まりにつながる可能性はある」とされています。また、「雨の降らない日数も増加している」「年間の総降水量で見れば、過去約130年間では変化傾向は確認できない」とも書かれています。

39ページの次に「地球温暖化に伴う雨の振り方の変化の説明(例)」として、鹿威し(ししおどし)のイラストが描かれています。気温が高くなると、鹿威しの筒が太くなり、筒が傾いて水が落ちるまでの間隔が長くなり、そして長く溜まった分、落ちる水の量が多く
なる、と。

今年は「30年に1度の少雨」のせいで愛知県新城市の宇連ダムが枯渇しました。貯水率が0%になってしまい、実に41年ぶりの”緊急導水”で静岡県の佐久間ダムから水の供給を受けたほどです。

「もう絶望」 貯水率0% “茶色の渓谷”となった愛知の宇連ダム(CBCニュース、2026年3月27日)

こんな事象も、この報告を読むと腑に落ちます。
(宇連ダムの貯水率は、6月5日時点では75%ほどに回復しています)

この手引書は全部100ページもあるので、全部に目を通すのは大変です。しかし自分の”ハルシネーション”も減らしたいので、気になるところだけでも拾って見てみようと思います…。

さて、広島大学の主催で地中熱に関するセミナーが開催されるのでご案内します。

名称: 第15回地中熱セミナー(第176回広大ACEセミナー) 
日時: 2026年6月22日(月)16:20~17:50 
会場: オンライン 
主催: 広島大学エネルギー超高度利用研究拠点 (HU-ACE) 
参加費: 無料 

主な内容:下記HPより抜粋 

挨拶:広島大学大学院先進理工系科学研究科 教授 松村 幸彦

解説:広島大学大学院先進理工系科学研究科 教授 金田一 清香

講演:ミサワ環境技術株式会社 技術開発部 部長 進堂 晃央 
「気候変動に適応する地中熱利用の最前線 ~多様な施設におけるシステム最適化と社会実装~」

本講演では、気候変動や脱炭素化の課題に対する有効な解決策として地中熱利用の最新動向を報告します。物流施設に加え、大型商業施設や融雪設備への導入事例を提示し、事前の熱応答試験やハイブリッド運用によるコスト最適化のノウハウ、多様な用途におけるシステムの高い事業性と今後の展望について解説します。

詳しくはこちらをご覧ください。