スペイン南部アンダルシア州に、9世紀に後ウマイヤ朝期に建てられた古い城砦「マトレラ城」(Castillo de Matrera)があります。その歴史的価値から1949年にはスペインの国定史跡に指定され、1985年には重要文化財に指定されていました。しかし積年の風雨にさらされて劣化がひどく、2010年ごろにはわずかな壁しか残っていませんでした。やがて修復工事が行われ、2015年に修復が完了したのですが、その出来栄えについては激しい非難がある一方で、評価する人々もいました。片や「一体全体、何をしてくれてんだ」「これは文化財の虐殺だ」などという非難がある一方で、”建築界のオスカー”とも呼ばれる国際的な建築賞A+Awardsにノミネートされました。修復後のマトレラ城の写真をみると、なるほどこれは物議をかもすだろうな、ということは理解できるのですが、同時に、こうせざるを得なかった事情や修復にあたっての制約もあったのかもしれないな、とも思いました。
壊れかけているものを修復するのは大変な作業ですが、ただ、後世の人々に「何やってんだ」と言われないようにしたいですね。
そんなことを連想させる記事に出くわしました。
Mining triggers extensive additional deforestation in sub-Saharan Africa
(採掘はサハラ以南アフリカで大規模な森林破壊をさらに引き起こす)(nature, 2026年6月3日)
産業革命以後、人類が排出してきた二酸化炭素によって地球温暖化が進んできた。このままでは地球環境が破壊されてしまう。だから脱炭素が必要。ついては電気自動車や蓄電池を普及させよう。ということで今、地球環境を修復するために脱炭素を進めている状況です。この流れの中でコバルト、リチウム、銅などがエネルギー遷移鉱物(Energy Transition Minerals, ETMs)として重要視され、経済安全保障上もその重要性は増しています。
しかし、それを採掘する時に何が起こるのかを知っておく必要があります。
今回のコロラド大学などの研究によると、サハラ以南のアフリカ大陸で2001年から2020年の間に鉱山開発によって187,000haの森林が直接的に破壊されました。さらに、これらの採掘地の周辺地域でも採掘に付随する活動(道路・港・鉄道の建設、農地拡大、居住地開発)によって森林破壊が進みました。採掘による直接的な森林破壊が1ha起こる時、間接的に平均34haの森林が破壊されていることが分かりました。コバルトと銅の採掘地でこの傾向がもっとも強くなっています。最悪な状況にあるコンゴ民主共和国では39,000haの森林が直接的に破壊され、その58.1倍が間接的に破壊されています。…いやもう、なんだかすごい状況になっていますね。
鉱物資源の採掘事業を行う時は、その環境影響評価に、このような周辺地域での間接的な森林破壊の影響もしっかり組み込む必要がありますね。もしこのような森林破壊を放置して「脱炭素化」を進めている、あるいは進めている気になっていると、後世の人々に「何やってんの」と言われてしまいそうです。地球環境の修復は、いい形で進めていってほしいものですね。
さて、JICAの主催でスリランカのモンスーンに関するセミナーが開催されるのでご案内します。
名称: 「気候変動下におけるモンスーン乾燥地域の地下水問題と塩害に対応した灌漑・排水」(【JICA】スリランカ国ジャフナ大学プロジェクト第3回四半期セミナー)
日時: 2026年6月26日(金)16:30~17:30
会場: オンライン
主催: JICA(国際協力機構)
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
本セミナーは、ジャフナ大学農学部の教員・学生と日本の研究者との間で、農業分野における知識・技術交流を促進するとともに、持続可能な農業および気候変動適応に資する研究連携・人材育成の基盤強化を目的として、日本で活躍する研究者にご登壇いただき、四半期ごとに開催しているものです。
「気候変動下におけるモンスーン乾燥地域の地下水問題と塩害に対応した灌漑・排水」
乃田 啓吾 准教授
東京大学 大学院農学生命科学研究科・農学部 生物・環境工学専攻地域環境工学
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