熊本宣言 グローバル・ネイチャーサミット2026

7月14日と15日に熊本市で「グローバル・ネイチャーサミット2026」が開催されました。27カ国・地域の政府や国際団体、企業、金融機関などから2,725人が参加し、ネイチャーポジティブ実現のための議論が行われ、「熊本宣言(ネイチャーポジティブな未来に向けた熊本の決意)」を採択して閉幕しました。

この宣言は、昆明・モントリオール生物多様性枠組み(KMGBF)の使命に沿い、2020年を基準として2030年までに自然の損失を食い止め、その傾向を逆転させ、2050年までに完全な回復を達成するという目標を加速させるための強い意志を表明しています。

宣言の主な内容を簡単に拾い出してみました。

【「社会全体を巻き込んだアプローチ」の必要性】
KMGBFの目標達成まで残り4年となる中、国際的な合意を具体的な行動へと移すためには、政府、市民社会、先住民族、地域コミュニティ、企業、金融機関、そして消費者など、あらゆる主体がつながる「社会全体を巻き込んだアプローチ」が不可欠。

【開催地・熊本の意義】
熊本は、自然が経済活動や地域住民の生活、食料安全保障、災害リスク軽減などをいかに支えているかを深く理解している地域。特に地下水や河川流域の管理を通じて、都市、企業、農業コミュニティが連携し、自然資源を保全できることを実証しており、ネイチャーポジティブな成果をもたらすためのモデルケースとなっている。

【経済的パラダイムの転換】
ネイチャーポジティブ経済への移行は、単なる「コスト」ではなく、持続可能な成長、レジリエンス、イノベーション、そして長期的な価値創造のための投資かつ機会として認識されるべき。

【ネイチャーポジティブ実現のための重要要素】
国際枠組みの受容: 
「2050 年までに、生物多様性が尊重され、保全・回復され、賢明に利用されることで、生態系サービスが維持され、健全な地球が保たれ、すべての人々にとって不可欠な恩恵がもたらされる」という理念(KMGBFビジョン)、ならびに「生物多様性の損失を食い止め、その減少傾向を逆転させる」という 2030 年ミッション、およびそのゴールとターゲットを受け止めること。

科学的知見の活用: 
2026年2月に発表されたIPBES(生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)の『ビジネスと生物多様性評価報告書』の重要性を認識すること。

日本政府の戦略の歓迎: 
日本政府の「生物多様性国家戦略2023-2030」および「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を高く評価すること。

企業の行動変容: 
生態系への影響を回避・最小化し、劣化した環境の回復・再生に寄与する。回避できない影響を代償する。高水準の十全性確保措置を講じる。こうしたミティゲーションヒエラルキーの適用をすべての企業に求めること。

指標と評価の標準化: 
自然への依存やインパクトを測定するための、科学的根拠に基づき実用的かつ標準的な指標や手法について連携し、企業の行動を加速させること。

統合的なアプローチ: 
自然資本を資産として認め、自然に根ざした解決策、循環型経済、脱炭素化の取り組みを統合すること。

公正な移行と「里山モデル」:
日本の里山モデルに代表されるような、自然と人間活動の調和を通じて地域社会の生計を向上し、社会的公平性を促進すること。

未来へのコミットメント:
本サミットの成果を生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)やその後のプロセスにおける具体的な進展につなげること。人々にポジティブな未来を実現する唯一の道は、ネイチャーポジティブな未来を築くことである。

2020年に公表された世界経済フォーラムの「新自然経済レポートシリーズ」の記事から三つのコメントを引用します。
New Nature Economy Report Serie(World Economic Forum, 2020年7月14日)

「生物多様性の喪失は、環境にとってだけでなく、企業や人類にとっても同様に深刻な問題である。現状維持はもはや許されない」

「44兆ドルもの経済価値の創出、つまり世界のGDPの半分以上は、自然に中程度または高度に依存している」

「新たな自然経済は、2030年までに年間最大10.1兆ドルの事業価値を生み出し、3億9500万人の雇用を創出する可能性がある」

ざっくり言って、私たちの生み出す富の半分は自然に依存している、ということですね。なるほど、経済的な観点で計算するとそのように言えるのだろうと理解しますが、そもそも私たちが生存していけるのはこの自然環境があってこそですから、経済価値云々をはるかに超えた、重要なことですよね。

さて、6月に地球環境戦略研究機関(IGES)の主催で行われたシンポジウムの映像が公開されているので、ご案内します。

名称: IGES・JISEシンポジウム「回復する自然と育つコミュニティ:みんなで創る都市里山と未来のビジョン」
開催日: 2026年6月23日
主催: 地球環境戦略研究機関(IGES)国際生態学センター、地球環境戦略研究機関(IGES)

主な内容:下記HPより抜粋 

○ 開会挨拶
・寺下 明文 神奈川県 環境農政部 環境部 環境課長
・小野 洋 IGES 所長  

○ オープニングセッション
「生物多様性保全の国際的潮流と都市からの展望」
齊藤 修 IGES 生物多様性と生態系サービスユニット プログラムディレクター

「都市里山から考える”30by30 plus(仮称)”:みどりの質と人のウェルビーイングの視点から」
矢ケ崎 朋樹 IGES 国際生態学センター 上級主幹研究員

○ パネルディスカッション「都市里山から考える自然との共生:量から質へ、そして人へ」
・奥田 青州 環境省 自然環境局 自然環境計画課 地域ネイチャーポジティブ推進室 室長
・藤野 貴司 川崎市 建設緑政局 総務部 みどりの将来像推進担当 部長
・吉武 美保子 NPO法人よこはま里山研究所(NORA) 理事/NPO法人新治里山「わ」を広げる会 理事/新治里山公園・にいはる里山交流センター センター長
・千葉 美佐子 新川崎ふれあい公園管理運営協議会 会長/NPO法人幸まちづくり研究会 理事長
・倉田 薫子 横浜国立大学教育学部 教授
・齊藤 修 IGES 生物多様性と生態系サービスユニット プログラムディレクター  
・矢ケ崎 朋樹 IGES 国際生態学センター 上級主幹研究員  
モデレーター:石川 智子 IGES 戦略マネージメントオフィス パートナーシップ・発展支援ディレクター  

○ メッセージとりまとめ/参加者との対話/Q&A
進行: 石川・ 齊藤・矢ケ崎  

○ 閉会挨拶
鈴木 伸一 IGES国際生態学センター センター長

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