最近、ChatGPTで知られるオープンAIのAIエージェントが自律的に他社のシステムをハッキングした出来事が大きなニュースになりました。ハッキングされた会社は、あるアメリカ製AIを使って不正アクセスの解析を試みましたが、安全対策上の制約(ガードレール)が機能して解析が進められなかったため、中国製のオープンモデルのAIを使って解析を行ったそうです。アメリカ企業がアメリカ製AIからハッキングされ、それを救ったのが中国製AIだった、という構図です。AIの挙動のコントロール。ガードレールの意味。オープンモデルの是非。米中のAI競争。いろんな議論が山盛りです。AIの進化が早すぎて、人間側の環境整備が追いついていないようです。こうなってくるとなんだか、カウボーイが荒馬を乗りこなすロデオを見ているようです。
そうは言っても、社会に役立つ技術はとにかく取り入れていきたいものです。最近、高知大学などが気候変動への適応にも役立つAIを開発しました。
気候変動適応策の立案を支援する地域気候特化型AIを開発(高知大学、2026年7月2日)
気候変動への適応策は各地域の状況に応じて策定する必要がありますが、それは簡単なことではありません。高度な専門知識も予算も必要ですから、小さな自治体になればなおさら大変です。そこで、専門家でない人でも適応策を作成できるAIがあれば大いに助かる、というわけです。
このモデルは、日本語に強いオープンソースLLM「Llama 3.3 Swallow 70B」をベースに、338編の学術論文やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書を用いてファインチューニング(追加学習)が施されています。「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)」などの定量的な数値データを直接検索・抽出するシステムをつくり、信頼性の高い将来予測に基づいた回答が生成できます。
このモデルの面白いところは、柔軟なカスタマイズ性があるため、開発途上国などへの展開も可能であること。高コストなファインチューニングをやり直す必要はなく、システムの核となる検索拡張生成(RAG)が参照するデータベースを、対象となる途上国の気候データや社会・経済情報に置き換えることで、その地域に特化したAIへと発展させることが可能なのだそうです。つまり国内の地方自治体のみならず、国境を超えて人材や財源が十分にない地域でも、地域の特性に合わせてカスタマイズしたAIを構築して、科学的な適応策を作れるというわけです。これはなかなか心強いですね。今後の展開に期待がふくらみます。
*地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース
database for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)について:
https://www.miroc-gcm.jp/d4PDF/index.html
さて、大気環境学会の主催で気候の極端現象と適応に関するイベントが開催されるのでご案内します。
名称: 大気環境学会 気候変動研究会 令和8年度研究集会「気候変動下における極端気象と適応」
日時: 2026年8月24日(月)10:00~12:00
会場: オンライン
主催: 公益社団法人 大気環境学会 気候変動研究会
参加費: 無料
主な内容:下記HPより抜粋
趣旨説明
永島 達也 氏 (国立環境研究所)
「日本の極端降水に温暖化が及ぼす影響」
川瀬 宏明 氏 (気象研究所)
「都市防災における都市型豪雨予測技術の開発」
河野 なつ美 氏 (埼玉県環境科学国際センター)
「地球温暖化に伴う熱中症災害の発生と対策」
齊藤 宏之 氏 (労働安全衛生総合研究所)
総合討論
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