今年の6月27日にThe Guardianに「悲しい必然:数十年にわたる気候変動の警告にも関わらず、なぜヨーロッパは気温上昇への備えがこれほど不十分なのか?」という記事が掲載された。5月後半から7月にかけての熱波で2万人を超える熱中症死亡者が出たためである。これは歴史的・景観的規制からエアコン設置が遅れたことと、そもそも冷房文化が欠如していたことが背景にあると言われている。8月11日には中国安徽省にある景勝地の黄山で台風13号接近による強風でロープウェイが一時停止し、多くの観光客が高山の狭い山道で身動きが取れなくなっていることが報道された。黄山は「怪石、雲海、奇松、温泉」で有名な高さ1860mの名山であるが、一年の半分は雨の気候である。雨合羽を着た多数の観光客が台風13号の接近警報にもかかわらず登山を敢行してこのような難儀にあったものと思われる。
ところでサステナブル消費(持続可能消費)やエシカル消費(倫理的消費)の研究・実践は地球的な気候と自然の変動を適切に考慮に入れて行われているのであろうか。そこで2026年にサステナブル消費やエシカル消費に関して公表された論文、論説、報告書等を検索したところ、ほとんどが、現在人類が惑星的非常事態にあることを明確に考慮していないことがわかった。もちろん筆者の検索が不十分で見落としがあることは間違いない。しかし検索した大半の研究が、ヨーロッパの冷房欠如や黄山登山者の台風接近の警告無視と同様の状態にあることは大変ショックであった。前のニュースレターに紹介したように「世界の科学者から人類への警告:第三の警告」の中心的テーマは、「人類が生態的な過剰消費を行って惑星的非常事態を引き起こし、今やそのただなかにいる」という認識である。9つの惑星的境界のうち、7つが突破され、気候転換点も1つがすでに突破されているのである。気候転換点は突破されると一人の人間の時間スケールでは現象は不可逆的に進行すると考えられている。
人類が作り出した「Ecological Overshoot」により「Planetary Emergency」のただなかにいる現在、問題解決には生産と消費をサステナブルに、エシカルにする以外にないのである。
山本良一(東京大学名誉教授、CEN名誉会長)
